市民のみなさまへ

新潟市医師会

脳梗塞を疑ったときに考えること

 

渡辺 正人

(東区 桑名病院)

脳血管障害、いわゆる脳卒中には3つの疾患があります。「脳梗塞」「脳内出血」「くも膜下出血」で、30年前は脳内出血が第1位でしたが、現在では脳卒中の60%以上を脳梗塞が占めるようになりました。これは、高血圧への関心が高まったことや人口の高齢化が関与していると言われています。 脳梗塞の症状は多彩です。これは梗塞が起こった部位や拡がりによって症状が異なるためです。よく見られるのは、左右どちらかの半身(手や足だけのこともあります)の脱力やしびれ感、呂律が回らない、頭で考えたことが言葉となって喋れない、ふらついてまっすぐ歩けない、片眼だけが見えなくなる、見えてはいるが、左右どちらかの視野が欠けてしまうなどで、これらの症状がある日何時何分かに「突然」起こったら脳梗塞を疑います。たとえ、これらの症状が5〜30分で治ったとしても、それは脳梗塞の前ぶれ(一過性脳虚血発作といいます)であり、本格的な発作の前兆と考えます。 これらの症状が出たらどう対応すべきでしょうか。答えは、すぐに119番に電話をして、脳卒中治療を専門としている二次医療機関(病院)に搬入してもらうことです。現在、新潟市には夜間・休日診療をおこなう「新潟市急患診療センター」がありますが、ここには専門治療の為の入院設備もなく、受診している間に、どんどん時間が経って、場合によっては、超早期治療の機会を失い、手遅れになりかねません。従って、脳梗塞に限らず、脳卒中を疑う場合のセンター受診は積極的には勧められません。また、「今は夜だから、明日の朝診てもらおう」「今日は日曜だから月曜に病院に行こう」という行動パターンも大きな間違いです。 最近の脳梗塞の治療は「時間との勝負」「Time is Brain(Brainは脳のことです)」といわれるようになりました。新薬として、動脈に詰まった血栓を溶かすことのできる最も強力な薬「t‐PA(組織プラスミノーゲン・アクチベーター)」が使えるようになったからです。もちろん、すべての脳梗塞患者に t-PA治療法の適応がある訳ではありませんが、平成24年に、このt‐PAを使った方は使えなかった方より4倍復職率が高かったという研究成果が発表されました。ただ、t‐PAを使えるのは発症から4時間半以内という厳密な規定があり、かつ、t‐PAを使えるかどうかの検査に、急いでも1時間半位かかります。1分でも1秒でも早く使った方が大きな効果が期待できるとともに、遅くなればそれだけ副作用(合併症)のリスクが高くなります。だからこそTime is Brain!なのです。 最後にもう一度申し上げます。新たな脳梗塞を疑う症状が出現したら、急いで「119番に電話」してください。消防法が改正され、平成23年度から新潟県でも、そのような相談を受けた救急隊は直ちに専門施設に搬送するよう義務化されています。

 (2014.10.2)

 
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