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新潟市医師会

脳出血と高血圧

今野 公和

(江南区 こんの脳神経クリニック)

 脳出血(脳内出血)は脳卒中のひとつです。脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3大疾患を含みます。脳卒中は、卒が「突然」、中が中毒の「中」、「あたる」を意味して、突然に発症します。脳出血の最大危険因子は高血圧であり、脳出血が別名として高血圧性脳出血と呼ばれることが多いのもそのためです。

 高血圧症は、かつては殆ど顧みられませんでしたが、保健師さん等の徹底した減塩指導と、多種多数の内服薬の普及により、よく管理されるようになりました。そのため、かつては脳出血が日本人の死因の最も多くを占めましたが、近年では、その頻度が減っています。しかし、それでも脳出血は稀でなく、発症後に重い後遺症で苦しむ人が少なくありません。

 高血圧と糖尿病と高脂血症は動脈硬化の3大危険因子と呼ばれ、脳の動脈硬化が進行すると、動脈が詰まる脳梗塞や動脈が破れる脳出血の大きな危険因子になります。動脈硬化の危険因子には、その他にも、加齢、ストレス、喫煙、肥満などがあります。

 高血圧と診断され、塩分控えめの食事指導と内服処方された患者さんの中に、「薬を飲み始めると一生飲まなければならないから、まだ飲みたくない」という方がいます。その時は「それは違いますよ」と私は答えます。高血圧を放っておくと、動脈硬化が進み、そこへ強い高血圧が加わると、脳出血や心タンポナーデをおこす危険があるからです。ですから、できるだけ早く高血圧への対策を考え、必要に応じて、早い段階から治療薬を内服すべきなのです。高血圧症の方には、血圧計を購入していただき、血圧ノートに日本医師会推奨測定法での結果を記入してもらっています。

 越後の人間は塩分控えめが苦手です。漬け物や塩鮭などを大量に摂取される方が少なくありません。塩分の取り過ぎは、脳卒中を来しやすいだけでなく、腎臓にもよくありません。

 さて、脳出血には破れやすい動脈があって、それは線条体動脈(別名、脳卒中動脈)といわれ、脳の中心部にある被殻(主に運動をコントロールする機能をもつ)、視床(知覚伝導の中継機能をもつ)、内包(運動神経の中継機能をもつ)に血液を送っています。出血を来すと、周囲にある、それらの神経機能が損なわれ、症状としては出血を起こしたのと反対側の運動麻痺、知覚異常、失語症などがみられ、脳圧が高まることで頭痛を伴うことが多いです。出血量が多ければ、重篤な意識障害、昏睡状態を来し、突然死に至ることもあります。

 前述のような脳の中心部での出血以外にも、頭頂葉、前頭葉、側頭葉、後頭葉など様々な部位の表面近くに出血する、皮質下出血というタイプもあります。その原因として、アミロイドという物質が動脈に沈着して出血しやすくなる、アミロイドアンギオパチイが考えられています。これには、小さな脳出血を繰り返すという特徴があり、進行する認知症の原因にもなり得るとされています。他にも小脳や脳幹に出血する場合もあります。脳幹には意識や呼吸の中枢があるので、小さな脳出血でも命取りになることがあります。

 脳卒中を疑わせるような頭痛、片麻痺やしびれなどがみられたら、すぐに、脳神経外科医や神経内科医の診察を受けることが望ましく、頭部CTや頭部MRI検査で、容易に出血部位が確定診断されます。脳動静脈奇形や脳動脈瘤の破裂も、脳出血の原因となることがあります。脳出血後の神経症状が遷延した場合には、リハビリテーションによる機能回復訓練が必要です。

 退院後にも、減塩の食事を心がけ、降圧剤を規則的に服用するなどして、血圧の管理をしつつ、脳出血の再発予防に努めなくてはなりません。残念ながら、中枢神経が一度損傷を受けると、機能回復はなかなか困難です。従って、脳出血を来さないためにも、日頃からの血圧管理が大切であると言えます。

(2015.11.12)

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