市民のみなさまへ

新潟市医師会

妊娠中のシートベルト着用について

石井 史郎

(中央区 竹山病院 産婦人科)

平成20年6月の道路交通法改正により、ドライバー、助手席のみならず後部座席の乗員にもシートベルトの着用が義務づけられました。では、妊娠中の御婦人はどのようにすればよいのでしょうか。

先進国の多くでは妊婦のシートベルト着用が法律で義務づけられています。これに対し、日本ではシートベルト着用義務規定における妊婦の取り扱い文言に曖昧な点があり、解釈や運用に混乱がみられます。2008年に日本産科婦人科学会から示された産婦人科診療ガイドライン産科編によれば以下の様に説明されています。

「斜めベルトは両乳房の間を通し、腰ベルトは恥骨上に置き、いずれのベルトも妊娠子宮を横断しない」という正しい装着により交通事故時の障害を軽減化できる。

具体的には妊婦さんが自動車の座席に着席したら、まずシートベルトを引き出して固定します。その際、斜めベルトは両乳房間に挟まれる位置に移動調節し、横ベルトは腰骨と恥骨に当たる位置まで下方へ移動します。妊娠子宮に斜めベルト及び横ベルトが掛からないように左右上下に位置調整を行う事になります。特に横ベルトは妊娠子宮の膨らみを、横切ってはなりません。ベルトが緩むことなく、ぴったりと心地よくフィットするように座席シート自体の位置や傾きを調節します。

現在日本の人口統計、警察統計ともに妊婦の交通事故死傷者数を明らかにしていないため、正確な統計数は不明です。文献によれば、推計年間約1万人の妊婦さんが乗車中に交通事故に遭遇しています。もしもシートベルトを着用していない場合、交通事故時の胎児死亡相対危険度はシートベルトを着用していた場合の4.1倍になると指摘しています。妊婦さんのシートベルト着用は母体及び胎児の命を交通外傷から守るために有用だと考えられます。

(2008.7.1)

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