市民のみなさまへ

新潟市医師会

認知症

中野 亮一

(西区 なかの神経内科クリニック)

人口の高齢化とともに認知症が増え続けています。最近の推計では本邦の認知症患者数は200万人を突破しており、従来の予想を超えたスピードで増加していて、2015年には250万人に達する見込みです。概ね85歳以上の4人に一人は認知症で、家族が認知症になると介護負担が大きく、社会全体としても多くの社会資源の投入が必要となるため、大きな社会問題となっています。

認知症とは、いったん正常に発達した知的機能が脳の障害(疾患)によって低下し、日常生活や社会生活に支障が出る状態を指します。中核的な症状は物忘れ(記憶障害)ですが、他に日付が分からなくなる、電気製品の使い方が分からなくなる、家の近くでも道に迷う、妄想や幻覚が見られるなど様々な症状が出現してきます。高齢になれば誰でも多少は物忘れが出てきて、新しいことを覚えるのが難しくなってきますが、これは脳の老化に伴う生理現象のようなもので、認知症でみられる記憶障害はこのような生理的な物忘れとは質が違います。例えば、旅行に行ってきた場所の名前を忘れてしまったというのは生理的な物忘れの可能性が高いのですが、旅行したこと自体を忘れてしまったというのは認知症の可能性が高いのです。

よく誤解されていますが、認知症というのは症状の名称で、「認知症」という疾患があるわけではありません。認知症の原因となる疾患は沢山あって、現在一番多いのはアルツハイマー型認知症ですが、認知症全体の50~60%を占めます。アルツハイマー型認知症の原因については不明な点もありますが、脳の神経細胞にアミロイドβ蛋白と呼ばれる異常蛋白が沈着して神経細胞死を引き起こすと考えられており、現在のところ、治癒させる治療法はありません。しかし、一時的にせよ症状の緩和を図り、病気の進行を遅らせる薬も開発されており、早期に診断をして治療を行うことはメリットがあります。また薬以外のリハビリテーション、適切なケアなども病気の進行防止に重要で、社会全体で支えるための仕組み作りも進んできています。「もしかして家族が認知症かも知れない」、そう気がついたらできるだけ早く医療機関を受診して相談をすることが大切です。

(2011.10.12)

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