市民のみなさまへ

新潟市医師会

心因性視力障害について

西巻 知佐子

新学期が始まると、学校の検診で視力不良を指摘され、眼科を受診する子供が多くなります。その子供達の大部分は、近視、遠視、乱視など何らかの屈折異常があり、適正なレンズを装用することにより視力を矯正することができます。しかし、強い屈折異常もなく、また器質的眼疾患もみられないにもかかわらず、視力が改善しない子供が時々います。

この子供達はなぜ視力が悪いのでしょう。

そんな時は、心因性視力障害という疾患を疑い、再度視力検査を試みます。その際、レンズによる矯正を色々と工夫してみます。例えば、凸レンズと凹レンズを組み合わせて、ゼロジオプトリー、すなわち素通しと同じ状態にして装用させ、「レンズを厚くしたからよく見えるよ」などと声をかけながら検査をすすめます。するとそれまで読めなかった視標をスラスラと答えるようになることがあります。この事は、この子供達の視機能には異常がなく、いわば心の目が閉じているため視力が不良だったことを物語ります。これが心因性視力障害なのです。

心因性視力障害とは、その名の通り心が原因となる視力障害で、様々な精神的ストレス、例えば親子関係や学校での人間関係のトラブルなどにより、身体症状として視力低下、視野異常、色覚異常などをひきおこすものです。小学校高学年位の女子に多いといわれています。

治療はその誘因となる心的要因を取り除くことですが、眼科医の力だけでは難しいものです。なにより保護者や教師など、周囲の人間の協力が必要です。心因性視力障害というものを理解していただき、個々の症例に応じた対応が望まれます。

近年、子供達を取り巻く環境は複雑となり、様々なストレスから多様な症状を示す子供が増えています。きちんと子供の心と向き合い、寄り添ってあげたいものです。

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