市民のみなさまへ

新潟市医師会

夜型社会と子どもの眠り

佐藤 勇

最近の調査で、日本の子どもたちが夜寝る時間は遅くなっていることがわかりました。現在では半数以上の3歳児の寝つく時刻は夜10時以降になっています。世界でも、日本の子どもが最も遅寝であることが報告されています。情報技術の進歩で、社会生活は1日24時間、週7日間フル活動するようになりました。その影響は小さな子供たちにも見られます。夜9時前に寝るお子さんに比べ、夜11時以降に眠るお子さんでは、昼寝も加えた1日の総睡眠時間が約1時間少なくなっていることがわかったのです。

睡眠時間が減ると感情の制御が不安定になり、大人では血圧の上昇や耐糖能の低下といった老化同様の過程が進展してしまうことがわかってきました。また小学生でも問題処理能力の低下や血圧の上昇が生じることがわかっています。最近幼少期の睡眠が脳の神経回路の形成にとても重要であることを示す実験結果が、生後1ヶ月のネコの実験で明らかにされました。本来人間の細胞にとって毒である酸素に対抗する作用をもつメラトニンというホルモンがあります。メラトニンは暗くなると分泌され、明るくなると光のためにその分泌が抑制されます。メラトニンの分泌量は4?5歳頃までが一生のなかで最も高くなることがわかっています。子どもたちの就寝時刻が遅れることで、身体の中でメラトニンの分泌量が減少し、その後の成熟過程に影響する可能性が考えられます。

遅寝の問題点として、睡眠時間の減少と、光環境の変化(メラトニンの減少)をあげました。すると特に第1の点に関して、「睡眠時間が確保できればいつ寝てもいいですか?」という質問がでてきます。人には生体時計があり、その1日は、大多数のヒトで約25時間ほどです。人は生後3-4ヶ月以降は、朝日など地球時間の手がかりの情報を上手に使うことができるようになり、毎日自分の生体時計を地球時間に合わせること、つまり1時間早めること(リセット)ができるようになります。つまり生体時計を早める作用のある朝、あるいは午前中の光を浴びることが非常に重要となるわけです。このように体内のリズムがきちんと調節されていることが体調維持に重要ですが、時差ボケに代表されるようなリズムのずれ(脱同調)が生じてしまうと、不眠、眠気、作業能率低下、全身倦怠感等の症状が見られます。体内の様々なリズムを光によって毎日調整することが、よい体調を維持するためにいかに大切であるかがおわかりいただけるでしょう。「朝寝や昼寝がたくさんできれば、遅寝でもかまわないのですか?」というご質問に対する答えはノーとなります。不規則な睡眠が睡眠覚醒のリズムの乱れをもたらし、リズムの脱同調につながる可能性があるからです。

大人はともかく、自分の生活管理が出来ない子どもたちにリズムの脱同調を起こしやすくするような環境を許してよいものでしょうか? ヒトは体内にいろいろなリズムを持つ生き物なのです。子どもたちの生活リズムを大切にし、子どもたちの体調を万全に保つよう我々大人は努力する義務があると思います。

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