市民のみなさまへ

新潟市医師会

がん医療と精神科

今村 達弥

(秋葉区 下越病院)

2007年4月がん対策基本法が施行されましたが、その中で医師のコミュニケーション技術の向上が課題として挙げられました。がん告知に象徴される悪い知らせをどう伝えるか、患者に対してどのような配慮がなされるべきか、それらが重要な医療技術の一つであることが認識されてきています。これまでそれぞれの医師が独自に工夫するものとされてきたようですが、最近の患者運動の発展もあって、この2007年度から厚労省の事業としてコミュニケーション技術講習会が開かれるようになりました。

インフォームド・コンセントは既によく知られた言葉となり、一般に「説明と同意」と訳されますが、主にからだの病状について医師が患者に「知」識を伝え、主に治療について患者の同「意」を得るというような理解が一般的かと思います。ここでのコミュニケーション上の問題は、からだにばかりに眼を向け過ぎていること、またこころに配慮するにしても、「知・情・意」と昔から言われているこころの働きについて、「知」と「意」だけで「情」が軽視され過ぎていることです。患者さんのこころの反応、特にその感情について理解し、情を持って患者さんに接する。これは本来、精神科の臨床において目指されてきたものです。つまり、からだの専門医とこころの専門医が合体するとまさに理想のコミュニケーションが行えると、理論上は言えます。実はそれをやろうとしているのが、現在私も参加しているコミュニケーション指導者養成講習会というものです。がん臨床の身体科医と精神科医がペアになって、コミュニケーション技術の指導者になろうという試みです。私も、市民ボランティアの模擬患者さんを相手にロール・プレイを長時間行い、日常臨床の多忙にかまけて押し流しがちであった患者さんのこころの機微に立ち止まり、まさに臨床の初心に立ち返った思いを味わっています。さて、今後このような取組みが各地で行われ、がん臨床の現場に活かされるようになるのも遠いことではないと信じます。

(2008.2.4)

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