市民のみなさまへ

新潟市医師会

バネと適応障害

中澤 秀栄

(東区 中ざわ心療クリニック)

ここに錘(おもり)の付いていない普通のバネと細いバネがあります。両方とも錘がないので身軽に伸びたり縮んだりして自由に動くことができます。でもそれでは仕事をしていないので、両方に同じ重さの錘を吊されました。普通のバネは頑張って力を発揮し困難を乗り越え何とか仕事を終えたので元の長さに戻り自由になりました。

しかし、細いバネはびっくりして次第に苦しくなり、気分も落ち込み、この先どうなるのだろうと不安になってきました。しまいにはイライラし文句すら言い出しました。とうとう錘に耐えきれなくなって伸びたままで元に戻れなくなりました。今、バネが2本必要なので何とかして、細いバネを元に戻したいのですが、何か良い方法はないものでしょうか?バネをもっと太いものに替えちゃえと言うのはダメです。バネであってもリストラはいけません。では軽い錘に替えたらどうか、バネの世界も最近世知辛くなり軽い錘では食べてはいけないのでこれもダメ。結局、細いバネ自身が強くなれば良いのですが、もうギブアップして自力では元の長さに戻れません。それでは誰かに錘を下から支えてもらったらどうでしょう。細いバネでも支えてもらえたら元に戻れそうですね。

ストレスがあってもそれをうまくクリアーできれば、普通のバネのように元に戻れます。これが私達の健康な姿で適応障害とは言いません。しかし個人の力が弱い場合やストレスが強い場合、うまく対処できなくなり、治療が必要になります。これを適応障害と言い、バネに例えると細いバネになります。私達の場合、錘がストレッサー(普通に言われるストレス)、バネが私達(の適応力)、伸びた部分がストレス状況(苦悩や情緒障害)、支えが治療になります。日常診療での治療では、薬物療法が中心となります。薬によって一時的に気分が改善するだけでなく、それを契機にして、ストレッサーそのものに対する本来の対処能力を回復することができます。

(2012.2.20)

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