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新潟市医師会

肝細胞がんに対する肝動脈塞栓術

関 裕史

(新潟県立がんセンター新潟病院 放射線診断科)

肝がんは、肝臓から発生する「原発性肝がん」と他の臓器のがんが肝臓に転移する「転移性肝がん」に分けられます。肝細胞がんは、原発性肝がんの中で最も多い悪性腫瘍で、特に慢性肝炎や肝硬変の方に発生するリスクが高いとされています。今回は、肝細胞がんに有効な治療法のひとつである「肝動脈塞栓術」をご紹介します。

肝動脈塞栓術は、肝細胞がんを栄養している肝動脈と呼ばれる血管から、血管をふさいで血の流れを止める薬を注入し、がんを兵糧攻めにする治療法です。方法は、まず局所麻酔をして、特殊な細い管(これをカテーテルと呼びます)を太ももの付け根から血管の中に插入します。血管撮影装置を用い、X線でお腹の中を透かして観察しながら、血管の中を通してカテーテルを腫瘍のすぐ近くまで進めます。次に、カテーテルから、血管をふさぐ薬(これを塞栓剤と呼びます)を抗がん剤と一緒に腫瘍に流し込みます。こうして、強い濃度の抗がん剤を直接がんに浴びせると同時に、がん細胞に栄養を送っている血管をふさいで、がんを兵糧攻めにするのです。血管をふさいだ薬は2週間程度で溶け、その後は再び血液が流れるようになりますが、それまでにがん細胞は死滅してしまうわけです。

治療に伴う症状としては、血管をふさぐ薬を流し込んでいる時にお腹の痛みや張る感じがあり、時に肩から首にかけて痛みを感じることがあります。術中は痛みを和らげる薬を使いながら治療してゆきます。治療後は、お腹の張る感じや発熱、時に吐気や食欲不振などがみられますが、通常1週間程度で改善します。また、一時的に肝臓の機能が低下しますので、肝臓を保護する点滴や注射を行います。

肝動脈塞栓術は、肝細胞がんが肝臓の中のあちこちに散らばっている、腫瘍のサイズが大きい、切り取ったり痛めたりしてはいけない大事な血管や臓器のすぐ近くに腫瘍がある、などの理由で、がんを切り取る方法(肝切除術)や熱で焼く方法(ラジオ波焼灼療法など)では治療できない場合に適応となります。肝動脈塞栓術の適応ついては、主治医や専門医にご相談ください。

(2012.3.13)

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