市民のみなさまへ

新潟市医師会

おなかにお口を 胃瘻(いろう)のお話し

大竹 雅広

口からものが食べられる!)。当たり前のことのようですが、実はものすごくありがたいことではないでしょうか。最近では脳血管障害の後遺症や口頚部疾患等によって口から物を食べられない方が増えてきています。このような場合にはどのようにして栄養をとったらよいでしょうか。今日はそんなことを少し考えてみたいと思います。

栄養補給、といってすぐに思いつく方法といえば『点滴』でしょうか。しかし、点滴は血管に直接管を入れて行いますので、管が入っている部位に細菌がつきますと感染症を発症し、時に致命的となることがあります。ですから病院以外で点滴を行うことはなかなか容易ではないですし、また、通常の点滴1本よりも缶ジュース1本の方がむしろ得られるカロリーは多く、これのみでは十分な栄養を与えることはできません。

次に思い浮かぶのは、正常な機能が残っている胃などに直接栄養剤を入れる方法で、経管栄養法(経腸栄養法)と呼ばれている方法です。点滴に比べより生理的な栄養摂取法と考えられており、清潔操作にもそれほどこだわらなくてよいため管理も容易で病院以外の施設でも実施されています。通常は『経鼻胃管』といって直径数ミリメートルほどの細い管を鼻の穴から入れ、管の先端を胃に置きます。しかし、鼻の奥での管の違和感や、栄養剤の逆流による肺炎発生などの問題点もあります。そこで、これらを解決するために、手術等で直接おなかの皮膚から胃に管を入れる『胃瘻』が考案されました。

『手術』といいますと「今更そんな痛い思いをしたくない(させたくない)」と思われる方が一般には多くいらっしゃいます。たしかに多少のリスクと手間はかかりますが、胃内視鏡を用いることで、手術時間はせいぜい30分くらいですし、終わればその後にほとんど痛みはなく、肺炎を起こす確率もぐんと低くなります。経鼻胃管との比較ではむしろ『胃瘻を作らないほうがかわいそうだ』と考える医療関係者が多いと思います。

胃瘻はおなかにできた新しい口とも言われています。残念ながらこのおなかの口ではおいしさを味わうことは無理かもしれません。しかし、『満腹感』は得られるでしょう。胃瘻にもいろいろなタイプがありますので、患者さんのニーズにあわせて最も適したものを選ぶことができます。胃瘻の作成方法は施設によって異なりますので、詳しいことは、お近くの外科、もしくは消化器内科でお気軽にお尋ねになってみてください。

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