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新潟市医師会

便失禁は治療ができる病気です

小林  孝

(東区 新潟臨港病院 外科・肛門科)

 “トイレに間に合わず便が漏れてしまった”、“知らないうちに便が漏れている”。今、日本では約500万人の人がこのような悩みを抱えています。

 便失禁とは、“無意識のうち、または意思に反して便が排泄される”排便障害の症状です。便意を催してからトイレまで我慢できずに失禁してしまう“切迫性便失禁”、便意を感じないままに自然に便が漏れてしまう“漏出性便失禁”、そして、約1/3の患者さんが両方の症状を持つ“混合性便失禁”の三つのタイプに分類されます。

 便失禁の原因は、加齢や出産、手術など様々ですが、明らかな原因がない場合もあります。従って、便失禁は高齢者や介護を必要としている人だけの病気ではなく、活発な日常生活を送っている人も含めて、すべての人に起こりうる病気といえます。

 便失禁が治療されない場合、便がいつ漏れるかわからないという不安や心配を抱え、日常生活で様々な不都合を生じて、生活の質の低下を招きます。

 便失禁の症状改善のための治療には、様々な方法があります。まず、排便習慣などの指導と薬物療法により、およそ5割で症状改善が期待できます。また、肛門括約筋や骨盤底筋の収縮訓練も外来における便失禁に対する保存的治療法の一つです。これらの保存的治療で効果が認められない場合には、手術的治療も考えられます。さらに2014年4月から、新しい治療法として仙骨神経刺激療法が保険適応されました。この治療法は、排便に関係する神経に持続的に電気刺激を与えることにより便失禁の症状の改善を図る治療方法で、持続的な電気刺激を行うために心臓ペースメーカーのような装置を体内に植え込みます。しかしながら、この治療法の実施は便失禁診療の専門施設に限られることになります。

 これまで、恥ずかしさや不安感、そしてどこに行けばよいのかわからない、などの理由で4人に3人の方がだれにも相談できず、一人で悩んでいるということです。便失禁を何度も経験しているような場合には、一人で悩まずに、まずはかかりつけ医に相談、そして必要な場合にはさらに専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

(2016.8.23)

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