新潟医療福祉大学 学長 山本 正治
奇抜なタイトルで申し訳ありません。18歳の時に田舎から新潟市に出て来て58年、ずっと新潟市民を続けています。18と58を足したのが私の年齢です。新潟市民として歩んだ58年、特にその後半部分に焦点を当て、ささやかな地域貢献を通した自己実現について紹介します。
1.田舎から出て来た18歳の時のエピソード
礎町の船着き場で下船したのち、県庁(現在の新潟市役所)に向かうバスに乗り、小林百貨店(三越デパート)前で降りました。全くの“お上りさん”で、古町十字路の場所が分からず、通りすがりの方に恐る恐る尋ねたところ、そこまで連れて行って貰いました。“心優しい新潟市民”との出会いが、到着初日の出来事となりました。爾来58年間、その時感じた“心優しさ”を今も記憶に留めています。
2.58年後半部分のエピソード
新潟大学医学部を退職し、新潟医療福祉大学に赴任しました。本校は2001年に開設された保健医療福祉スポーツ分野の専門職を養成する大学です。医師・歯科医師・薬剤師以外の殆どのメディカルスタッフを養成する6学部13学科を揃えています。初代学長は髙橋榮明先生(元新潟大学医学部整形外科学教授)で、私は二代目です。私の役目は、髙橋前学長が行った大学の基盤づくりをさらに発展させることでした。
髙橋前学長が建学の理念を「優れたQOLサポーターの育成」と定めました。私は「優れたサポーター」になるための要件を分かりやすく提示するために、副学長時代の1年間(2009年)、保健医療福祉専門職としての要件を、自分自身の経験を基に、明けても暮れても自問自答しました。そして得た結論が「STEPSサイクル」です。Science&art(科学的知識と技術)、Teamwork&leadership(チームワークとリーダーシップ)、Empowerment(対象者を支援する力)、Problem-solving(問題解決力)、Self-realization(自己実現意欲)を5つの要件とし、英語の頭文字をとってSTEPSとしました。人生の節目節目においてSTEPSを繰り返すことを勧めています。STEPSは学士力(文科省)だけでなく、社会人基礎力(経産省)、さらには医師・看護師を始めとするメディカルスタッフの業務指針ともほぼ一致します。
STEPSで私が最も大事にしているのはEと最後のSです。対象者(患者さん)に対しては“心優しく”(前出)支援すること、自身にとっては自己実現に向けた意欲を持ち続け、仕事を達成した時に充実感を得ることです。
新潟市民であり続けたい学長として、地域社会に貢献できる人材育成のためにSTEPSサイクルを実践してきました。ちなみに大学の現況ですが、学部・大学院の今年度入学者数は約1,200名、在学者数は4,400名、昨年度の卒業者数は1,000名に達しました。新潟市出身の入学生、卒業生数はそれぞれ約350名、340名です。また卒業後新潟市内に就職する人は約350名にのぼります。本学卒業生の就職後3年間の離職率は極めて低いことも特徴です。開設後18年間で約9,500名の卒業生を輩出し、凡そ3,000名が新潟市内で活躍しています(市内に本社がある企業・施設・事務所勤務者を含む)。皆さまと共に働くメディカルスタッフにも卒業生がいるかも知れません。
新潟市民となって58年、自己実現に向けて努力しています。今後ともご教示・ご支援をお願いします。最後にもう一つお願いがあります。先生方と共に働くメディカルスタッフにもSTEPSサイクルを紹介し、自己実現に向けて励ましの言葉をかけて頂ければ幸いです。