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食品の裏側
相馬 博志
かつて食品添加物の専門商社に勤めそれを売り歩くセールスマンだった著者は、大学を卒業して、はじめて食品の加工工場を見たときの驚きを、こう話している。
「添加物の『効き目』―それはすごいものでした。暗い土色で、形もドロドロのタラコ。それが添加物の液に一晩漬けるだけで、赤ちゃんの肌のようなプリプリのタラコに変貌するのです。」
そして、添加物のすごさを知った著者は、日本一の添加物屋になってやろうと意欲に燃えたのだった。麺の製造工場では、麺を日持ちさせるために「プロピレングリコール」、「pH 調整剤」を勧め、餃子の皮の製造工場では、「乳化剤」、「増粘多糖類」を勧め、かまぼこ屋には「化学調味料」、「たんぱく加水分解物」、「大豆たんぱく」を売り込み、加工食品業者の「合理化」に暗躍してきた。
現在の食品製造加工業において食品添加物なくしては、成り立たない。食品を長持ちさせる、色形を美しくしあげる、品質を向上させる、味を良くする、コストを下げるなど、すべて食品添加物を使えば簡単なことだそうだ。この「光」の部分に対して、「影」の部分が当然ある。添加物の人体への害悪・毒性がそうであるがそれ以上の問題として、添加物が食卓を崩壊させることである。
そんな添加物の「光」の部分に目を向け、メーカーや職人の悩みを解決する救世主であると思っていた著者が、この業界から足を洗ったのは、娘の誕生日に食卓に出たミートボールがきっかけだった。そのミートボールは、著者が開発したものだった。クズ肉に添加物を加えミートボール本体を作り、ソースとケチャップは添加物のかたまりみたいなもので全部で20~30種類を使った。クズ肉に添加物をじゃぶじゃぶ投入して作ったミートボールを、自分の子供が大喜びで食べていたという現実に、仕事を続けることはできなかったという。
このあと、現在流通している食品にいかに添加物が大量に使われており、それが一般の食品に限らず調味料にまで及び、日本の食文化を崩壊させようとしているか、が述べられている。ただ著者は「何々を買ってはいけない」式に添加物を批判しているわけではない。現在の社会生活の中で加工食品を一切使わず、すべてを手作りにするのは、困難であろう。それは著者も認めている。ただ、加工食品は、加工度が高くなれば添加物も多くなることは当然で、少し手間をかければ、添加物はかなり減らせることになる。
食品は、安ければいい、色がきれいだからいい、というものではない。この点を著者は、消費者に苦言を述べている。
添加物を使った加工食品は、「食とはこんなに簡単に手に入るものだ」と思わせてしまう怖さがあることを知ってもらいたい。一読をお勧めする。
食品の裏側
| 著者 | 安部 司 |
|---|---|
| 発行日 | 2005年11月10日 |
| 出版社 | 東洋経済新報社 |
| 定価 |
本体1,400円+税 |