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言技力
広橋 武
著者は元NHK アナウンサーの鈴木健二氏。「気くばりのすすめ」はベストセラーとなった。言技力は「げんぎりょく」と読み、言「こと」+技「わざ」、―ことわざ―に引っかけての著者の造語である。「人の心の中に生き続ける100の言葉」を紹介して、著者の独自の理論を展開している。
この著書の中で面白い項目として、「仕事に知識や経験が75%役立つのは平社員、社長になると75%は人間としての何かだ」。これは、第二次世界大戦に勝利を収め、「地球はアメリカのためにある」状態になった1960年代に、アメリカの経営者の間に言われたスローガンなのだそうだ。倒産する前に従業員が逃げ出す組織もあれば、倒産してもなおかつ社員が留まって、この社長と共に会社を再興しようとする企業もある。その違いは、経営者の人格にある、と断言することができようと述べている。また別の項目として「下学上達すべし」。これは孔子の論語の中に出てくる言葉だそうだが、簡単にいえば、いわゆる学問は上学であり、現実の暮らしの中から、人間のあるべき姿を求めていくのが下学なのだそうだ。著者は医師や教師のように、師と呼ばれる人が尊敬される社会は良い社会であるとしている。現代の日本ではそれを否定せざるを得ない状況が見られるが、それはともかく医師も教師も、言わば社会の弱者を守り教え育てる責務を担っている。医師は患者と、教師は学生と直接向きあって心を開きあう事が大切だとしている。この著書は、私達が子供の頃、祖父母より子供への躾の一つとしてよく言われた言葉も含まれている。「誠を尽くせば、動かない人はいない」、「今やらなくて、いつやる」、「友とは自分以外の自分である」、などの章に分かれていて、人の心の中に生き続ける言葉を現代の事例を引用して、わかりやすく解説している。
日頃より、それぞれの患者に対して最適な言葉を選んで説明する必要性を感じていた。知識や情報をいくら持っていても、それを伝えるのは言葉である。全ての患者に納得、満足してもらい信頼を得るのは非常にむずかしい。私は産婦人科医であるから患者は女性がほとんどだが、女性か男性か、主婦かビジネスマンか等、おかれている環境や立場によっても患者の受けとめ方は異なってくるからだ。この著書は、人の心を感じる柔軟性、何を求めているかを推測する想像力、洞察力を持って様々な患者と向き合い心にひびく言技力を使って患者の心を開く一助となる一冊であった。
言技力
| 著者 |
鈴木 健二 |
|---|---|
| 発行日 |
平成18年5月5日 |
| 出版社 |
株式会社 グラフ社 |
| 定価 | 本体 1,600円+税 |