ホーム > 新潟市医師会会報より > マイライブラリー >

シュガーな俺

大野 雅弘

3年前の夏、僕は太りぎみのプロレスラーみたいな体型の医師から「重症の糖尿病」と宣告されました。30代でやせ型なのに血糖値が異常に高かった(血糖値:300以上)。無類の酒好きなのでアルコール漬の高カロリー食を続けた不摂生が祟ったのか、異常な喉の渇き、激ヤセ、倦怠感などの自覚症状が出たときには病気は相当進行していました。

『シュガーな俺』はこのような書き出しから始まっている。本書は著者の糖尿病体験を赤裸々に描いた世界初の糖尿病小説(!?)である。本人のいろいろな症状から糖尿病の疑いを強くもつも、医師から重症の糖尿病と正式に宣告されて以後の著者の自己反省、自己嫌悪(日頃の不摂生が祟ったことや自己管理の悪さなど)とともに糖尿病についての必死の勉強が注目される。しかし、「糖尿病は基本的に一生治らない病気です」の一文に行き当たった時の著者の絶望感、そして根治できないとわかった、だからセカンド・ベストを目指せばよいとひらき直る。II型糖尿病の治療として著者は食事療法を重要視し、著者自身が料理を覚え、厳重なカロリー計算をやり、1日1,800カロリーにおさえる、なみだぐましい努力には頭が下る。

しかし、厳重な食事療法や薬物療法を施行したにもかかわらず、一時改善されつつあった症状が半年後に悪化した。血糖値も500以上、HbA1cも12以上と過去最悪の結果となっていく。

精査の結果、最初はII型糖尿病と診断され治療していたが、実際はI型糖尿病であり、I型への「遷移」を知らされる。正式には「緩除進行I型糖尿病」と診断され、インシュリンの治療を受けることになる。II型糖尿病がI型糖尿病へ遷移することや緩除進行I型糖尿病の存在も私は初めて知ったことである。

著者は糖尿病と戦いながら、いろいろな状況に遭遇し、一喜一憂し、ある時には混乱に突き落されたりしている。人生、悪いこともあればいいこともある。僕を混乱のきわみに突き落したあの日のできごともその「あたりまえのこと」の極端な例に過ぎなかったのではないか。いいことと悪いことのつづら折り、それが人生なのだ。だからこれからも、悪いことは起きるだろう。しかし、その後に必ず、いいことがあるはずだ。神様はそうやってバランスを取っているのだ。問題は自分の人生の運と不運の総和が、プラスになっているかどうかなのだ。そして今のところ、総計はプラスになっていると著者は結んでいる。

平成14年に厚生労働省が発表した「糖尿病実態調査」によると糖尿病が強く疑われる人は約740万人、糖尿病患者数は212万人で、ここ20年間で約2倍に増加しており、さらにこの傾向は続くものと考えられる。糖尿病の危険性は年令を重ねるごとに増加することから、高齢社会の日本においては糖尿病はまさに「国民病」となってきた。

その糖尿病患者からみた治療の一喜一憂や混乱の実態をみた本書は糖尿病専門医のみならず、私のような門外漢の医師にとっても一読の価値があると思われる。

2007_01-2.jpg

シュガーな俺

著者
平山 瑞穂
出版社
世界文化社
定価
本体1,400円+税

戻る