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『朝の詩 1982-2002』 父、母、わたしを守ってくれるもの

月岡 一治

新潟市医師会会員の皆様の中に、詩を受け入れる方は大変に少ないことでしょう。俳句、短歌、川柳にくらべても、詩はよりマイナーな文芸の分野ですから。このたび私が皆様に御紹介するのは、主に西日本に多くの購読者を持つ全国紙、産経新聞の第一面に常設されている詩欄への入選作品集です。この欄が始まった最初から選者をされておられる新川和江さんの、「あとがき」の一部を紹介させて頂きます。

産経新聞題字横に、「朝の詩」の連載がはじまったのは、1982年8月1日のことです。以来20年、元旦も、世界的大事件が勃発した翌朝も、休刊日を除いて欠かさず掲載され続けてきました。新聞の玄関フロントと呼ばれる第一面のいちばん目に付く場所に、連日詩が掲載されるなどということは、他の新聞に類を見ないことで、近頃は行く先々で、話題にして頂けるようになりました。

「朝の詩」を読んで、自分もはじめて詩というものを書いてみました、と投稿してくださる方が、最近とみに増えてきました。6、7歳から92、3歳まで、老若男女、職業もさまざま、それぞれの立場での生活感覚が、いきいきと描き出された作品ばかりです。

もちろん、当初からの常連もたくさんいらして、まあ、この方もお年をとられて…と、お名前に書き添えられた年齢を、感じ入って眺めることがあります。稍ややあって、ほかならぬ私自身も同様に年をとっていることに気づき、クスクス笑ってしまうのでした。「朝の詩」と共に生きた20年―というのが、現在の私のいつわらぬ心境です。

一方、本の帯を紹介しますと、『産経新聞一面連載「朝の詩」20年間の最高傑作113作を掲載』、と銘打たれ、「80を超える婦人の孤愁を癒すため、庭の陰からのそりと現れるガマガエルの子、死別した父の面影を追い求め街を彷徨う息子、老いても気高い人間の心……。」とあります。

私がこの本をいつも身近に置くわけは、二つあります。一つは、22年前、61歳で急逝した父の思い出と重なるからです。遺品整理をしていたところ、この「朝の詩」の切り抜きが幾つも見つかりました。ああ心を動かされていたんだなとしみじみ思ったものでした。父の短歌は、たくさん残っているのですが。このことで私がこの欄に投稿し始め、息子たちも始め、入選作品を中心に二冊の家族詩集が手元に残ることになったのでした。私たち親子は皆、新川さんの「朝の詩」の卒業生なのです。二つ目の訳は、私たち夫婦の姿が、この作品集の中に残されているからです。この作品集のすばらしさを伝えるために紹介したい他の方の作品が幾つもあるのですが、著作権などがあってこのたびはできません。そこで問題がない自分の作品だけを、紹介させて頂きます。

 

二十年

 

近くにいすぎて

見えにくいものがある

鏡の前にならんだ

おまえを見ていたら

しっかりと老けていて…

 

気の毒で

そっと言うと

あなただけ年取らせたら

かわいそうだからって

 

僕たちの二十年

鏡の前から

街へ買物に出かけていく

日曜日の少し遅い朝の

二人の二十年

 

平成6年9月18日掲載とあります。この日から更に13年が過ぎているのです。ほかの人たちにも…。

どんなに支え合って生きていても、夫婦、親子はいずれ永遠に別れていかなければなりません。その悲しみが通底する毎日を、今日も私たちはさまざまな思いを抱きながら、暮らしていきます。

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『朝の詩 1982-2002』 父、母、わたしを守ってくれるもの

新川 和江
出版社 幻冬舎
定価 1,200円+税

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