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『容疑者Xの献身』
本多 晃
私の読書にかける時間はそれ程長くはありませんので、先生方に紹介するに当たり、それ程多くの書物から選択することはできません。さらに、分娩の待機中の片手間に読むことが多く、あまり難解な書物は敬遠する傾向にあり、気楽に流して読めるものばかり読んでいます。そのため私のライブラリーの中には、仕事に役立つ情報であるとか、人生の教訓になるようなものはあまりありません。また気に入った作家ができるとその作家のものばかりを読んでいるので、選ぶ範囲も限られますが、その中から今回選んだ本は『容疑者Xの献身』です。
作者は東野圭吾です。最初に東野圭吾の本を手にしたのは『天空の蜂』という文庫本でした。誤って子供が乗ったまま飛び立ってしまった無人操作の爆弾搭載ヘリコプターが、原子力発電所の上空で停止し、ヘリを操っている犯人が日本全国の原子力発電所の運転停止を求めるというものです。その奇抜な設定や臨場感あふれる描写が独特で、いっぺんにはまってしまい、それからというもの東野圭吾の本ばかりあつめました(ほとんどが文庫本ですが)。謎解き、人間ドラマ、青春、科学、スポーツ、家族愛、恋愛、笑いなど、そのジャンルは多岐にわたっており、どの作品も発想がユニークです。大阪府立大学工学部出身なので、理系の分野の作品も多く、医学に関連したものもあります。『変身』は世界初の脳移植を受けた青年の人格が徐々に変化していくという作品で、玉木宏と蒼井優が主演で映画化もされています。
東野圭吾の作品には映画やテレビでドラマ化されているものも多く、どちらも楽しめるという観点から私が特に気に入っているのは、『秘密』です。映画では小林薫と広末涼子が主演しています。主人公の妻子が、スキーバスの転落事故に遭い妻は息を引き取ります。母親が身を挺して守った娘は、意識の混濁はあるものの、無傷に近い状態で救出されます。娘の体には、妻の魂が宿っていて、主人公と娘の肉体を借りた妻との、不思議な生活が描かれていきます。主人公の目線から物語は進行していきますが、私も娘がいるので感情移入しつつ小説も映画も楽しめました。
福山雅治演ずる物理学者の湯川が活躍する『ガリレオ』というフジテレビの月9ドラマが、昨年放送されました。湯川は天才的な頭脳を持つ典型的な理系人間で、論理的な思考で数々の難事件を解決していきます。相手を子馬鹿にしたような発言も多くみられますが、やさしい一面も併せ持っています。ただ子供が苦手で、子供の相手をすると体に変調をきたすことがあります。
この湯川が登場する作品が『容疑者Xの献身』です。この作品で東野圭吾は第134回直木賞を受賞しています。またこの秋に映画も公開予定とのことです。
物語は、天才数学者石神の朝の通勤場面より始まります。石神は新入りのホームレスを横目で見ながら、弁当屋で弁当を購入します。そこには石神のアパートの隣人の花岡靖子が働いています。石神は彼女に好意を持っていますが、それを伝えられず、彼女の方は相手にしていません。そんな中、靖子の別れた亭主が靖子の前に現れ、復縁を迫ります。困った靖子は娘の美里とともにアパートの自室で、前の亭主を殺してしまいます。そこに隣人である石神がやってきて、事の顛末を察知し協力を申し出ます。そして天才数学者と言われた男の卓越した頭脳が、完全犯罪を構築するための数式を組み立て始めます。警察はその動機より花岡母娘に目をつけますが、捜査が進むにつれ、あと1歩といったところでことごとく決め手に欠きます。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ちかけます。すると、湯川と石神は大学時代の友人であることが判明します。お互いを天才と認識する物理学者と数学者とが、殺人事件をめぐり対決します。そして最後に驚くべき真実の全貌が明かされます。
今回マイライブラリーということで『容疑者Xの献身』を紹介させて頂きましたが、お気に入りの本の紹介というよりはお気に入りの作家の紹介となってしまいました。東野圭吾の作品はあまり気張らずに読めますし、どれもなかなか面白いと思いますので、機会がありましたら、お手にとってご覧下さい。
『容疑者Xの献身』
| 著者 | 東野 圭吾 |
|---|---|
| 出版社 | 文藝春秋社 |
| 定価 | 本体1,600円+税 |