ホーム > 新潟市医師会会報より > マイライブラリー >
『ほんとうの環境問題』
中山 徹
二酸化炭素を削減すると、世界や日本は地球の温暖化に対しどれほどの寄与が出来るのか?
本書の結論の一つ。京都議定書で定められた6%の二酸化炭素削減を百年間を続けても、温暖化に対する抑制効果は僅かに1%、温度にして0.028度にしかならないという。2.8度ではなく0.28度でも無い。
本書では京都議定書の無意味さと欺瞞、ゴミのリサイクルを巡る諸問題、そして「環境問題」とは畢竟「エネルギー問題」の裏返しに過ぎないこと、そしてこれは日本人の多くが何となく感じているような、倫理的な問題ではなく、多面に経済的な問題であり、高度な国家戦略を持って対応さるべき事項であることが述べられている。早稲田大学教授の池田清彦氏とあの養老猛司氏の共著。
IPCC( 気候変動に関する政府間パネルIntergovernmental Panel on Climate Change)の予測によれば、現在のペースで温暖化が進めば、一番高い可能性として百年後に気温の上昇2.8度、海面は35センチの上昇という。
このパネルの見解は地球の温暖化の約半分は二酸化炭素の蓄積によると言うのだが、二酸化炭素の六割はいわゆる先進国が排出、京都議定書を批准している国の排出はさらにその内の六割だそうである。そして議定書に謳われた二酸化炭素の削減は6%であるからして、単純な掛け算で、この議定書は二酸化炭素の削減2.2%を約したものに他ならず、温暖化の抑制は、二酸化炭素のもつ影響を考えるとさらにその半分、たかだか1%強を期待し得るのみである。たとえ議定書通りの削減が達成できたとしても、海面や気温の上昇に対する効果はまさに誤差範囲であるとする。
この呆れるほどの微々たる成果を目指して、途方もない精力を費やしているように見える、わが日本の現状を二人は嘆き、警鐘を鳴らしている。
このパネルを主導するEU は6%という数値目標を設定することにより、排出権取引という巨大市場を生み出すのが狙いだったのではないか。後述するように我が国が大量の排出権を外国から購入せざるを得ないのは明らかであり、二兆円と目されるこのための費用を考えると、これは既に窮地である。役人(特に環境省)のヴィジョンの無さ、さらにいつまでたっても付和雷同体質を抜け出せないマスコミに二人の舌鋒は鋭い。
前書きは皮肉たっぷりに始まる。2007年バリ島で開かれた国連気候変動枠組み条約の会議では議場にエアコンがよく効いていて、車のクーラーをずっと掛けさせていたままの参加者も多かった、と。またあのゴア氏の邸宅は光熱費だけで月に数十万円もかかるらしい。
「この人たちは誰一人として、地球温暖化が驚異だなどとは本心で思っていないからだ」と切って捨てる。
『ほんとうの環境問題』
| 著者 | 池田 清彦・養老 猛司 |
|---|---|
| 出版社 | 新潮社 |
| 1,050円(税込) |