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『世界がわかる理系の名著』

吉田 誠一

ダーウィンの<種の起源>、ワトソンの<二重ラセン>、プリニウスの<博物誌>など、何十年も前に、袢纏とコタツの定番スタイルで、青臭いアカデミズムに浸りながら読み漁ったあの名著のその後の評価は? 本書はこうした名著の内容のエッセンスを現代風に解説し、作者とその教訓などをユニークにまとめたものです。私も、斜め読みしかできず、よく理解できなかった書籍ですが、その内容がコンパクトに紹介され、そこに盛り込まれた知恵を有効に生かす工夫などにも触れてあり、久しぶりにワクワクした感動を覚えました。病弱なダーウィンが高齢までスーパー科学者として活動できたのは孤独な研究生活だけではなく多くのサポーターに支えられての結果であることや、さわりピックアップでは<自然は飛躍しない>の格言の根拠が詳述されています。ワトソンの小学校の担任は彼の矢継ぎ早の<なぜ?>に答えられるよう毎日予習を余儀なくさせられたエピソード、DNA の構造を針金と板を用いた模型だけではどうしてもうまくいかず、子供の積み木遊びをヒントに針金をねじったりしていくうちに、<自然はシンプルで美しい>と解答を見出した瞬間なども紹介されています。メンデルの<雑種植物の研究>は要素がはっきりしないため発表から36年、死後16年後にようやく認められており、その業績は1万株以上のエンドウの栽培と1万3千のデーターの解析から得られた賜物であると述べられています。ワトソンがスジ派なら彼はまさにモノ派であり、日本では田中耕一氏や下村脩氏に通じる人物と推察されます。プリニウスがローマ皇帝に百科事典として贈呈した全37巻からなる博物誌には、全くためにならない本は一冊もないと言い残し、自然は人間が正しく認識すれば有用であるが誤って利用すると必ず報復を受けると教訓を述べています。実際ローマ艦隊の司令官として活躍していた彼が火山の大噴火に遭遇して壮絶な最期を遂げたことは皮肉なのか悲劇なのか? その他にも、パブロフの<条件反射学>、ガリレイの<星界の報告>、ニュートンの<プリンキピア>、カーソンの<沈黙の春>等々、世界を変えた理系の名著14編が紹介されています。これらの古典はどの科学者にとっても青春の書であるが、京都大学の人間研究科の教授である筆者は、これらの本物の教科書を誰でも読めるようわかりやすく解説されています。恐らく皆さんも名前は聞いたことがあるが読んだことのない本が多いと思われますが、本書はこれらの古典への招待を兼ねた、教育と娯楽が合体したような一冊です。牧歌的な研究が主であるモノ派よりアメリカ風のスジ派が主流の現代においては科学をめぐる現実を簡潔に伝えていくことも大切であるとも述べられています。せわしない毎日を送り、医学と医療との関係が問い直されている昨今、一服の清涼剤として本書をお勧めします。

 

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『世界がわかる理系の名著』

著者 鎌田 浩毅
出版社 文春新書
価格 本体750円+税

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