小川 大志
(おがわ整形外科クリニック)
患者さんの訴える痛みについて考えることは、医者である私たちの原点であるとも言われています。特に、日常的に患者さんの痛みに向き合っている整形外科医にとっては、もっとも重要な事だと思っています。
痛みにも、様々な種類があるといわれています。
誰でもきっと経験がある肩や膝などの関節の痛み、また打撲などの怪我が原因でおこる痛みは、身体のある部分に、炎症や組織の損傷などの刺激によりおこる痛みです。これを侵害受容性疼痛といっています。原因の多くが局所の炎症や損傷ですので、治療の最初の段階は安静保持と消炎鎮痛剤が中心となります。
もう一つは、神経系の病気等によっておこる神経障害性疼痛という痛みです。これには腰椎椎間板ヘルニア等によっておこる坐骨神経痛、帯状疱疹後におこる神経痛などがあります。
また侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の要素を併せもつ痛みを混合性疼痛といっています。これには非特異的腰痛(いわゆる腰痛症)などが該当します。
いずれの痛みも、治療開始の時期をのがすと慢性化することがあるので、特に発症した当初の治療が大切だと思っています。数日間で軽快する一過性の痛みならいいのですが、日常生活に支障のでるような痛みが継続するような時には、長期間我慢することなく、医療機関を受診したほうがよいと思います。
もうひとつ、現代社会に生きる私たちが知っておいた方がよいことが、心理的・社会的要因が痛みの発生や程度に関与しうる、という事です。不安・怒り・悲しみ・恐怖・孤独感といった情動が痛みに影響する場合がある、という事がわかってきています。また社会的地位や仕事上の問題からくるストレス、対人関係などの社会的要因も同様のことがいわれています。心身の健康管理、普段の生活でストレスをためこまない心がけなども、痛みを悪化させない大事な秘訣だと思います。
(2018.01.25)