古泉 直也
(中央区 新潟県立がんセンター新潟病院 放射線診断科)
ヨード系造影剤という薬は血管造影、尿路造影、点滴静注胆嚢造影、CT検査などで使われます。血管造影、尿路造影、点滴静注胆嚢造影では、ヨード系造影剤を血管から投与して使用しないと検査ができません。また、CT検査ではその目的や検査部位によってはヨード系造影剤を必要としませんが、使わないと病気がわかりにくく正確な診断ができなくなることがあります。検査当日に検査担当医の判断で造影を実施または中止する場合もあります。造影剤は体の中の臓器や血管を染め分け、正常な部分と病気のある部分を見えやすくし診断や治療に役立ちます。ヨード系造影剤の副作用としては、投与直後から数分以内に発生する即時型と数時間から数日後に発生する遅発型があり、全体の3%程度(100人に3人くらい)報告されています。
症状は吐き気や気分不快、かゆみや発疹といった症状がほとんどで、その多くは軽症で少し経過をみるだけで回復します。しかし、まれに(1万人に数人くらいの頻度)血圧低下、呼吸困難、ショックなど、治療や入院を必要とする副作用が発生する場合があります。また、極めてまれですが(25万人に1人くらい)重篤なショックにより死亡することがあると報告されています。
造影剤は注射時に体が熱く感じることがありますが、通常は体に何の影響も与えずに尿の中(胆嚢造影剤は胆汁の中)に排泄され、約24時間以内に体外に排泄されます。造影剤を静脈から注射する場合、注射針が血管内に確実に入っていることを確認してから注射を開始しますが、途中で血管外に漏れて痛みやしびれを生じることがあります。多くの場合は経過をみるだけで自然に回復しますが、まれに治療を必要とする場合があります。
また、このような副作用や合併症を生じた場合は、医師や看護師が適切な対応を行いますので、気分不快や注射部位の痛みなどを感じた場合は直ちにお知らせください。
(2016.03.18)