山名 展子
(新潟市民病院 放射線治療科)
前立腺がんの放射線治療の方法には、大きくわけて体の外から放射線を当てる外部照射と前立腺の内部に放射線の出る線源を入れて治療する組織内照射があります。
外部照射として前立腺全体に4~5方向から放射線を当てる3次元放射線治療が従来から行われてきましたが、5%くらいの患者さんで直腸出血が起きていました。3次元放射線治療ではへこみがある形状の線量分布を作れず、前立腺に接する直腸の線量を下げられなかったためです。近年では強度変調放射線療法(IMRT)が普及してきています。IMRTは病変部の線量や、直腸、膀胱など放射線から守りたい正常臓器の線量をあらかじめ指定し、その線量を満たす多数の小さな照射野をコンピュータを用いて自動的に計算させる方法です。多数のビームを組み合わせることで放射線に強弱をつけることができ、直腸の線量を抑えながら、前立腺の形にあわせて放射線を当てることが可能で、より高い線量を前立腺に入れることができます。外部照射には重粒子線、陽子線などの粒子線を使う方法もありますが、前立腺がんに対しては保険適応にはなっておらず、300万円程度の自費となります。また、粒子線治療がIMRTや組織内照射に比べて治療成績が優れているという報告はありません。
組織内照射には2種類あり、放射線を放出する小さなヨウ素線源を70個程度前立腺内に永久に埋め込む低線量率組織内照射と、前立腺にアプリケーターと呼ばれる細いチューブを留置し、その中に放射線が出る線源を一時的に挿入して治療する高線量率組織内照射があります。低線量率組織内照射は主に低リスクの前立腺がんに行われます。高線量率組織内照射は外照射と組み合わせて行うことが多いのですが、グリソンスコアが高い患者さんでも良好な治療成績が報告されています。これらの治療法の中から最適な治療法を選択するために、泌尿器科や放射線治療科医師に相談していただくことをおすすめします。
(2018.03.19)