牧野 春彦
(東区 まきの乳腺クリニック)
小林真央さんが34歳と若くして乳癌で亡くなったため、若い女性が乳癌を心配して乳腺外来に殺到しています。ここでもう一度、理想的な乳癌検診方法について考えてみましょう。2000年3月に老健第65号の通知によって50歳以上の乳癌検診にマンモグラフィが導入され、その後40歳代にも導入されました。マンモグラフィの導入で腫瘤径の小さな乳癌、あるいは非浸潤癌が多く見つかるようになり、それなりに成果を上げています。しかし、この方法がベストでしょうか?乳癌の診断法は触診、マンモグラフィの他に超音波検査(エコー)、CT、MRIなどがあります。CTあるいはMRIのほうが乳癌診断精度が高いのではないでしょうか。もちろんこれは費用対効果を無視した考えで、マンモグラフィ検診の乳癌発見率が約0.3%であることを考えると、1人の乳癌を見つけるのに300人(もう少し少なくて済むかもしれませんが)のCTあるいはMRI検査することはコストを考えると成り立ちません。エコーはどうでしょうか?有望と思われますが、残念ながらエコー単独の乳癌検診は科学的根拠(エビデンス)がありません。マンモグラフィは乳がん死亡を50歳以上で22%、40歳代で15%と有意に減少させることが臨床試験で報告されています。やはり乳癌検診はマンモグラフィが基本となります。しかし最近、乳腺組織が厚い高濃度乳房(デンスブレスト)で乳癌の診断率が低下することが分かり問題となっています。若年者、日本人でデンスブレストが多いことが分かっています。40歳代の日本人を対象とした臨床試験でマンモグラフィにエコーを併用すると小さな乳癌が1.6倍みつかることが報告されました。死亡率減少の有無の検証にはまだ数年かかるため、国の対策型検診は変わりませんが、現在の時点では最善の検診方法と思われます。ただ、①エコー併用検診では要精検率が上がることと②エコー検診は施行者の技術で差がでるため精度管理が必要という問題点があります。これらを解決して増え続ける日本の乳癌死亡を減らしたものです。
(2017.08.28)