新井 啓
(江南区 かめだ泌尿器科クリニック)
精巣が大きくなった、反対側に比べて精巣が硬い。でも痛みは無いし。病院に行くのもちょっと恥ずかしい。こんなことがあったら要注意。もしかしたら精巣腫瘍という病気かもしれません。
精巣は陰嚢の中、左右に一つずつある臓器で男性ホルモンの分泌と精子の形成を行っています。精巣が悪性腫瘍化するのが精巣腫瘍で15歳位から30歳代にかけて発生のピークが見られます。およそ10万人に1人程度の疾患ですが、この年代の中では最も頻度の高い悪性腫瘍です。放置すると容易に他の臓器に転移を起こすので、命を落とすことにもなりかねません。
原因はまだよくわかっていませんが、停留精巣(出生時に精巣が陰嚢内になく、股の付け根やお腹の中にある疾患)や家族歴(血縁関係のある方が同じ疾患に罹患したことがある)などが危険因子とされています。
ある日大きくなった精巣に気がつき、それが徐々に進行します。大きくなった精巣は反対側に比べて硬く触れます。厄介なのは痛みがないこと。痛みがないため恥ずかしさのあまり様子を見てしまい、ようやく受診した際には転移を起こしていたという場合もあります。
治療はまず腫瘍化した精巣を速やかに摘出します。同時にCTなどで転移の有無を調べます。精巣は生命の源であるため、腫瘍化した組織型は多種多様です。転移の有無や組織型を考慮し、精巣摘出だけで経過観察が選択される場合もあれば、放射線治療や抗癌剤治療、腹部リンパ節切除術が追加される場合もあります。
転移を起こしやすい腫瘍ですが、転移した場合でも抗癌剤が良く効きます。転移例の80%の方は治癒に至りますが、まだ100%でないことが課題になっています。
早期に見つかれば完治する可能性が高い疾患です。泌尿器科専門医師であれば触診で精巣腫瘍だとすぐに診断が可能です。精巣が大きく硬くなったら迷わずに泌尿器科を受診してください。
(2017.11.28)