院長 渡邉 正人
当院が最も力を入れているのは脳血管障害(CVD)の超急性期治療です。他の外科系領域と同じように、CVDの治療もいわゆる“Less invasive therapy”が主流となってきています。例えば、当院でのくも膜下出血や未破裂脳動脈瘤の治療については、昨年1年間でみますと「開頭クリッピング術」が16例、カテーテルによる「コイル塞栓術」が35例と「コイル塞栓術」の方が多くなっています。また、頸部内頸動脈狭窄症を含めた脳血管狭窄病変に対しても、全身麻酔下で3~5時間を要する「頸動脈内膜剥離術」はすっかりなりを潜め、昨年は全例(31例)が局所麻酔下での「頸動脈ステント留置術」を含めたステント留置術となっており、所用時間も1時間程度で済んでいます。これだけ手術時間が短縮できたのは、当院に脳血管内手術専門医が3名いる(1名は指導医)ことが大きいと思っています。また、CVDに占める脳梗塞の割合は年々増加しており、当院に昨年1年間に入院されたCVD患者さんは967名で、そのうち脳梗塞(TIAを含めて)が687名と71.4%を占めています。その脳梗塞の内訳で目立つのが心原性脳塞栓症(CES)の増加です。CESは重症型が多く、t-PAや血行再建術が有効なケースが少なくありません。本年2月に米国で行われた国際脳卒中学会でも3つのstudyで血管内治療の有効性が示されました(表1)。当院でもt-PAで再開通が得られなかった例や、t-PAが適応外の例にSolitaireやPneumbra(いずれもカテーテルで血管内の血栓を吸引除去する血管内治療です)を積極的に行っています。御存知の会員の先生方も多いと思いますが、t-PAが発症4.5時間以内、血栓吸引術は8時間以内という厳密なルールがあります。従って、会員の先生方にはCVDが疑われる患者さんが受診された際には、迅速に(Time is BRAIN!)当院の地域連携室にお電話頂くか、あるいは救急車を要請して頂ければ当院で受け入れ、スタッフを総動員し、最新の治療を行わせて頂きますので宜しくお願い申し上げます。
CVDの急性期治療以外の当院のアピールをさせて頂きます。まずは「頭痛外来」があることです。脳外科の森田幸太郎医師は日本頭痛学会の「指導医」の資格を持っており、木曜の午前中を頭痛外来としております。また脳卒中後遺症で拘縮・痙縮の強い方に対しボトックス療法を行っております。その他、嚥下が悪くなった方に対するVF・VE検査、胃瘻造設、抗血小板剤・抗凝固剤服用中の方のGTF・CFもヘパリン置換下に1検査なら3泊4日、両方希望される場合は4泊5日でお引き受けしております。このような患者様を御紹介して頂く場合は、地域連携室から予約を取って頂いて、一度診察に来て頂く形が、待ち時間の短縮と信頼関係の構築において重要と考えます。
当院は常勤医13名と新潟大学の御協力を得て、年2,700台以上の救急車を受け入れています。これは新潟大学、市民病院についで市内で3番目の数です。医師・スタッフは救急医療に対し、皆、使命感とMotivationを持って日々、それぞれの立場で全力で取り組んでおります。今後とも宜しくお願い申し上げます。