副院長 大谷 哲也
【基本理念】患者とともにある全人的医療
新潟市民病院は平成26年に40周年を迎えました。平成19年には中央区鐘木に病床数660の新病院として移転し(図1)、平成25年に身体合併症を有する精神科疾患に対応するため、16床の精神科病棟が開設され病床数は676床となりました。現在35診療科で、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、第一種感染症指定医療機関、救命救急センター、総合周産期母子医療センター等、各種指定を受けています。「患者とともにある全人的医療」を基本理念に以下の4項目の基本目標があります。
1.患者さんに信頼されるぬくもりのある医療をめざします
すべての患者さんの生命の尊厳を守り、診断治療で誤りのない情報を伝え、患者が適切な判断ができるよう援助するという、日本病院会の倫理綱領を遵守しています。平成26年の患者満足度調査では、入院患者さんの95%が入院治療に満足していると回答しています。また、外来部門では、90%の患者さんが外来診療に満足していると回答しています。
2.重症・専門・救急医療を中心に質の高い医療をめざします
新病院では救命救急・循環器病脳卒中センターとして50床となり、救急ステーションを併設しドクターカーを運用しています。平成25年度厚生労働省の救命センター評価では86/100と甲信越北陸地方では一位の実績です。救急車搬送は6066台で、うち来院時重篤患者数は2297人と県内随一です。ドクターカー導入後は心原性心停止の1ヶ月生存率は21%、社会復帰率は14%改善しました。平成26年の登録医アンケート調査の結果では、救命救急医療に対応する当院への期待の大きさは明白です(図2)。自治体病院の使命である救急・災害・周産期などの医療はこれからも重視してまいります。
平成18年には地域がん診療連携拠点病院に指定されました。平成25年より、高度先進技術提供のため、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を導入し、胃がん、大腸がん、前立腺がんの手術に対して実施しています。消化器系がんに対するロボット手術は新潟県内では当院のみです。また、平成27年には強度変調放射線治療を導入しました。これにより合併症を軽減しながら根治性を高めるといった従来では実現不可能であった放射線治療が展開できるようになります。医療の質を自己評価するため日本病院会で行われているQIプロジェクトに参加しています。
3.地域医療機関や福祉施設と連携し、人々の健康支援をめざします
平成16年に地域医療支援病院の指定を受け、平成27年4月現在では登録医590人、登録施設504施設、紹介率69%、逆紹介率73%など、地域医療に力を入れています。平成26年登録医アンケート調査では、登録医の93%は市民病院が地域医療に貢献していると考えていることが明らかになりました。これからの10年で、新潟市は超高齢社会となり、病院完結型医療から地域完結型医療への変換が重要となります。そのため、登録医との協力体制を充実させることを目的として患者総合支援センター「スワンプラザ」を開設しました。「スワンプラザ」は、地域医療室とがん診療支援室の二つの組織で構成され、両者の業務を支援することで、私たちは、患者の皆様の入院・退院・社会復帰が円滑に進むよう努力して参ります。
4.人間性豊かな医療人の育成をめざします
臨床研修が必修化された平成16年以降、123名の研修医が当院で研修を受けています。当院は必修7科目の「継続プログラム」を採用しており、基礎的臨床能力に劣る結果となると後日判明した簡略化された「弾力プログラム」は採用してきませんでした。今後も適切なプログラムを選択することで、対人・コミュニケーション能力を持ち、臨床能力の優れた医師を養成していきたいと考えています。また、平成29年度より専門医制度が学会主導から専門医機構主導になるのに対応し、各科で専門医取得が可能なカリキュラム作成に取り組んでいます。新しい専門医制度の条件を遵守し、県内外から初期研修医を採用し、新潟県の医師の充足・育成に貢献したいと考えています。