理事長 小林 義雄
とやの中央病院は昭和51年に鳥屋野潟のほとりに創業し、昭和58年に療養病床の前身にあたる特例許可老人病棟を取得して以来、一貫して高齢者を対象とした医療を提供しています。要介護高齢者の増加に伴い昭和63年には老人保健施設を併設し、以後も関連する複数の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、軽費老人ホーム(いわゆるケアハウス)などの協力病院となってきました。
そのような経緯から、現在診療を行っている患者さんのほとんどは介護施設に入所中の要介護高齢者で、認知症やパーキンソン症候群などの変性疾患や脳血管障害、大腿骨骨折や椎体圧迫骨折などによりADL低下をきたし、不眠や便秘、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理をはじめ、認知症の中核症状・周辺症状に対する投薬、反復する誤嚥性肺炎や尿路感染症の治療、褥瘡の処置や経管栄養の調整など多岐にわたる医学的管理を日常的に必要としています。
こういった日常的な医療については施設への往診で対応し、単純撮影やCT、超音波などの画像検査、内視鏡を用いた胃瘻の交換などは外来で行っています。協力施設入所時に基本的な治療方針について説明と同意を得ているため、誤嚥性肺炎や尿路感染症、胆管炎などで入院が必要な際は、すみやかに当院に搬送し医療療養病棟に入院することができます。ただし手術や処置の適応があると判断した場合は、近隣の急性期病院にご紹介させていただくこともあります。入院に至った疾患が軽快した後は歯科医師や各療法士と共同で嚥下機能の評価やリハビリテーションを行い、ほぼ全員がもともと入所していた施設に退院しています。そのため治療方針や既往歴などの情報が途切れることはなく、生活機能や投薬、食事内容の変更についても十分に連携できる体制となっています。また他の急性期病院に入院中の帰宅困難な要介護高齢者のご紹介も以前からお受けしていますが、今後厚生労働省が提案し新潟県が策定する地域包括ケアシステムの一翼を担うことを目標に、地域の急性期病院・在宅療養支援診療所との連携をよりいっそう強めていきたいと考えています。
我々が診療している要介護高齢者は、加齢と様々な合併症により認知機能や意欲、視力、聴力、嚥下機能、代謝・排泄機能、筋力などが低下しているいわゆるフレイルな状態にあり、治療や検査などによる有害事象の発生率も高く、医学的介入を生命予後や機能予後の改善に結びつけることは容易ではありません。そのため内服薬1つを導入するにしても、個々の患者さんの背景因子を考慮の上、それが生命予後・機能予後・QOLに対してどのようなインパクトがあるのかを検討し続ける必要があります。我々が診療する要介護高齢者の多くは、看護・介護職員や各療法士、歯科医師、歯科衛生士による専門的評価と支援を十分に得られる環境にあるため、多職種の連携のもと個々の患者さんに応じた最良の医療を行うことは我々の責務だと考えています。
当院で行われる診療は病棟における急性期疾患管理から往診や外来による日常的な健康管理まで幅が広く、専門臓器科の医師をはじめ、老年科・精神科・皮膚科の医師、高齢者・嚥下を専門とする歯科医師、育児中の女性医師など、多様な専門・ライフステージの医師がそれぞれ分担・連携しながら診療にあたっています。
新潟バイパス女池インターからすぐという立地にあり、協力介護施設のみならず近隣の病院や介護施設、住宅地とのアクセスも非常に良いため、要介護高齢者に対する医療を中心に今後も地域医療に貢献していきたいと考えております。