新潟白根総合病院 病院長 黒﨑 功
─蒲原平野のまん中に、いのちを守る砦築いて─
1988年に発行された白根健生病院医誌“三〇年のあゆみ”表紙のタイトルは、地域医療と健生病院に対する故前理事長の思いを強く我々に伝えるものです。白根健生病院が地域住民の期待を一身に背負って設立されたのは、1958年7月でした。当初は32床と小さなものであったようですが、1972年には現在の場所に162床の病院を新築して移転、さらにその約10年後には1.5倍の床面積まで増築され、病床数は273床を数えました。冒頭の設立30年を記念した病院医誌はちょうど増築の際に編纂されております。しかし、少子高齢化や人口減少、大病院志向、医師減少などが指摘されるようになった2000年以降は、患者数減少のために療養型への移行が真剣に検討されてきた時期もあります。しかし、“いのちを守る砦”を維持するためには、南区(旧白根地区)における急性期医療を存続させることが必須であり、そのためには老朽化した病院を何とかしなければならない、という機運が強くなっておりました。病院の新築にはさまざまなリスクが伴いますが、組合員および地域住民からの多くのご支援を得ることができ、本年2月に新病院を開院することができました。また、同時に、新潟市の病院であることを明示するために、名称も白根健生病院から新潟白根総合病院に変更いたしております。
新病院は6階からなり、1階に外来、救急室、放射線・内視鏡診断部門、地域連携室および新潟市在宅医療・介護連携ステーション南、医事課など、2階に手術室、ドック・検診センター、管理部門、そして3−6階には4つの病棟が配置されております。病院機能の多くは新しい病舎に移転しましたが、透析室、リハビリ、RI部門などは、旧病院の増築病棟を改修して設置されています。CT、MR、 血管造影装置は最新のものに更新しています。最上階からは遮るものなく蒲原平野を360度眺望でき、“砦”以上の病舎になったのではないかと自負しております。(図1)
診療面では、外科内科消化器疾患、慢性腎臓病疾患、難治性神経疾患を始めとして、循環器疾患、慢性呼吸器疾患、歯科診療、ドック・検診などに幅広く対応しております。さらに、地域の診療所、介護施設と積極的に連携を進め、地域包括ケアシステムの中核を担えるような活動を実践しております。また、地域住民との交流を深め、健康や疾病に対する意識を高めるために、月2回のセミナーを開催しています。講師は病院医師やコメディカルが務め、開催数は50回を超えていますが、多い時には100−130名の聴講があります。(図2)
今、地域医療に求められていることは、一人ひとりの患者の気持ちをくみ取り、そのニーズに合わせて治療を組み立てることです。患者が家族の誰かを介護する立場にある時は、患者だけの治療だけでは医療は完結しません。患者が置かれている立場や環境も重要な背景因子の一つです。患者と医療者がパートナーとして治療に取り組めるような医療を、今後とも提供してゆきたいと思っております。