院長 佐藤 信昭
はじめに
当院は1951年6月、全国に先駆けて「ガンセンター」の名称を採用後、1998年にがん予防センターを開設し、2001年に緩和ケアチームが始動、2004年に外来化学療法を開始しました。2007年1月に都道府県がん診療連携拠点病院に指定されて以降も、最善のがん医療を提供するための取り組みを重ねてきました。
2015年の県内がん診療連携拠点病院のがん登録データから当院の状況をみると、症例数の多い臓器順に、肺*477例、(*以下、がん診療拠点病院中1位)、胃342例、乳房*331例、前立腺*310例、大腸307例、皮膚(黒色腫含む)*218例、子宮*184例、膀胱*152例、食道120例、膵臓*97例で、その他を合わせて3,120例のがん登録がありました。
今回は、がん検診、がん医療の充実、がんとの共生を中心に当院の取り組みの一部を紹介いたします。
がん検診
胃がん検診ではペプシノゲンとピロリ抗体による胃がんのリスク層別化(ABC検診)に内視鏡検診を組み合わせて評価することにより真にリスクの低い受診者を割り出し、その人達の検診間隔を延ばすことができるかどうかの研究に参加しています。肺がん検診では低線量CTの実用化を目指した無作為化比較試験および大規模コホート研究(AMED革新的医療実用化研究事業)に力を入れています。
がん医療の充実
がんの薬物療法の進歩は目覚ましく治療戦略が大きく変化しています。血液悪性腫瘍、肺がん、皮膚悪性腫瘍、泌尿器科領域をはじめとした各種のがん領域でも新規分子標的薬の治験、臨床試験が数多く行われています。小児科は慢性骨髄性白血病、横紋筋肉腫、高リスク神経芽腫、再発急性リンパ性白血病への新規標準治療の開発など、県内の小児がん患者さんへ最先端の治療を提供しております。乳がんの薬物療法への遺伝子検査の応用、婦人科と共同で遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診断のための遺伝学的検査(BRCA1/2変異検査)を導入しています。
食道ならびに胃の腫瘍性病変に対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行ってきましたが、2017年4月から診療体制が整い、大腸の腫瘍性病変に対するESDも実施可能になりました。呼吸器外科では2016年度の完全鏡視下肺癌手術(肺葉切除)が105例(全肺癌手術239例の44%)で、今後さらに増えていくと思われます。大腸がん、食道がん、胃がん等の鏡視下手術も症例数が増加しています。
切除不能・再発胃がん治療では二次、三次治療以降における化学療法、免疫治療薬の臨床試験が行われています。
がん患者さんが安心して暮らせる社会を目指して
地域連携相談支援センターへの相談件数は年々増加し、2012年度には10,137件であったものが、2016年度には18,448件にも達しています。がん患者さんが安心して暮らせる社会を実現するために、社会が連携してがん患者さんや家族を支援することが求められています。がんと診断されてから治療が始まるまでに41%、治療開始後に48%の患者が離職をしているというデータがあります。2016年5月より院内でハローワーク新潟と連携して、長期療養患者を対象とした就労についての出張相談を開始しました。今後もがん患者さんや家族を支えていきたいと思います。
おわりに
がん専門病院の今後担うべき役割として、活力ある健康長寿社会を目指して、質の高い、安全ながん医療を提供するべく精一杯努力してまいります。
新潟市医師会の会員の皆様には今後ともご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。