河渡病院 院長 若穂囲 徹
河渡病院は新潟市東区にある単科の精神科病院です。昭和35年9月に個人病院として病床数74で開業しました。初代理事長の佐藤有志栄氏は松林を切り開き、木造モルタルの病棟を作りました。昭和36年に医療法人恵松会を設立し、河渡松崎地区の土地区画整理事業を行いました。そのため住宅地の真ん中に河渡病院があるという現在の状況がつくられたのです。その後は先代の佐藤克栄理事長のもとで段階的な増床を経て昭和60年の病院不燃化増改築工事で450床となりました。現在は佐藤栄午理事長のもとで病棟の機能分化、新病棟の建設に入ろうとしています。地域移行を進めていくと約2割の病床削減となる見込みです。これは2025年に向けての政府目標にほぼ沿った内容となります。
河渡病院は前述したように住宅地の真ん中にあり、精神科全般では東区の地域医療を支える役割をもちます。桑名病院、新潟臨港病院、木戸病院と連携し、うつ病、認知症、アルコール依存症などの治療を行っています。合併症、救急については新潟大学医歯学総合病院、新潟市民病院にお世話になっています。
アルコール医療は当院の特徴であり、現在まで500回を超える月例研修会を行っています。昭和46年に定員30名でアルコール依存症の組織的治療を開始し、今日まで46年の歴史があります。当時の本田正則病院長は京都の名の通った寺院の跡取りで、親鸞の思想を取り入れ、治療を行ったといいます。第2回のアルコール医学会で講演した際は大反響があったということです。当時はアルコール専門の病棟は日本全国でも珍しくアルコールセンターの呼称で多くの患者さんが入院していました。ただ当時は閉鎖病棟で治療が行なわれていましたが、時代の流れとともに本人の意思による任意入院となり、開放病棟で治療を行うようになりました。3か月の研修プログラムに沿って治療が行なわれ、クリニカルパスのさきがけといえるでしょう。
アルコール依存症は医療関係者の間でも誤解があり、否定的な印象をお持ちの方が多いと思いますが、私は生活習慣病のひとつと捉えることがその対策となると考えています。塩分を摂り過ぎる生活が高血圧と関係するように、アルコールの飲み過ぎで依存症になると考えて欲しいのです。そもそも軽症のうちはアルコール性肝障害という診断で内科を受診することが多いのです。重症になり難治性になってからようやく精神科に紹介されてくるため予後が不良となるのです。109万人のアルコール依存症患者の4万しか治療を受けていないというデータがあります。いかに早く受診に繋げることができるかが、これからの課題です。外来であれば断酒にこだわらず、健康被害を少なくするハームリダクションという考えがあります。初期の患者の受診に繋がるのではないでしょうか?受診しやすい精神科を目指しています。よろしくお願いします。