竹之内 辰也
「病院ではどのような職種の人々が働いているか?」と聞かれて、皆様はいくつ思い浮かべることが出来るでしょうか。医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、等々…。その中の一つに診療情報管理士という職種があります。診療情報管理士は公的な資格ではなく、日本病院会などの関連団体(4病院団体協議会)による認定資格です。診療情報管理士は、「医療機関における患者の様々な診療情報を中心に人の健康に関する情報を国際統計分類等に基づいて収集・管理し、データベースを抽出・加工・分析し、様々なニーズに適した情報を提供する専門職種」と定義されています。資格を取るには、指定の学校を卒業もしくは2年間の通信教育を受講した後に、認定試験を受けます。私自身も10年程前に病院情報管理の責任者になったのを機に、診療情報管理士の資格を取りました。医師は基礎医学コースが免除されますので、1年間の通信教育で試験を受けられます。認定試験は全体の合格率が50%前後となかなか高いハードルです。十分に勉強して臨んだつもりでしたが、コーディングと呼ばれる国際疾病分類(ICD)の症例問題に苦戦し、試験中は焦りから大量の脂汗を流しました。
新潟県における診療情報管理学の歴史は古く、診療情報管理士による交流・研修の目的で行われている新潟県診療情報管理研究会は今年で実に49回を数えます。毎回、様々な分野の専門医や県外のカリスマ診療情報管理士に講演を依頼し、スキルアップに努めています。そして昨年9月には、新潟医療福祉大学の山本正治学長を大会長として、第44回日本診療情報管理学会学術大会が朱鷺メッセで開催されました。「診療情報管理の教育と研究~医療の質と安全を高めるために~」をスローガンとし、県内外から予想を上回る1,500名以上の参加がありました。いずれの会場も熱気にあふれ、山本大会長の思いが参加者一人ひとりに伝わってくるような素晴らしい学会でした。県内からも多数の優れた演題発表があり、改めて本県における診療情報管理士の質の高さを実感しました。
現在、医療機関における診療情報管理は大きな転換期を迎えようとしています。厚生労働省の「データヘルス改革推進本部」は、国民の保健・医療・介護データを有機的に連結し、AI等を利用した解析に基づいて医療介護の施策を行うことを目指しています。新潟県もそれに呼応する形で「にいがた新世代ヘルスケア情報基盤」プロジェクトを起ち上げ、当医師会の浦野正美副会長も県医師会代表として協議に参加しています。これまで各病院単位での完結を基本構造としていた病院情報システムは、今後はセキュリティを担保した上での診療情報のクラウド化に向かうものと思われます。しかし、そのためにまず何よりも必要なことは、各施設において日々発生する膨大な診療情報を適切にコード化して、体系的・一元的に管理し、正確なデータベースを構築することです。それは病名登録に限らず、処置・手術のコード化、がん登録等のレジストリ業務、重症度、医療・看護必要度のスコア化など、診療情報管理士が活躍できる場は院内に沢山あります。皆様の病院でも診療情報管理部門だけでなく、医事会計や医師事務作業補助者など、診療情報管理士は色々な部署で働いています。縁の下の力持ちとして病院を支えている彼らに、ぜひ目を掛けてあげて下さい。