中村 茂樹
NHK月曜夜の「サラメシ」という番組をご覧になったことがありますか。「サラメシ」は「サラリーマンの昼飯」の略で、IT企業の社員食堂の豪華さに驚くこともあれば、町工場の愛妻弁当にじんとくることもある。著名人の愛した昼食が取り上げられることもあり、なかなかに楽しい番組だ。たかがランチ、されどランチ、ランチをのぞけば人生が見えてくるのでR。
さて今日ご紹介するのは、とやの体育館裏の住宅街の中にある「クリスティ」だ。営業は平日昼だけ、客は近所の常連だけ、メニューは定食(730円)だけと、ずいぶん欲のない店だ。店に入り女主人ののりちゃんに目で挨拶すると、座るだけで食事が出てくる。グランドピアノの形のテーブルに陣取り、まず全巻揃った「島耕作」シリーズを片端から読むのが私の習わしだ。「そんなに面白い?」のりちゃんが不思議そうに聞く。これは男にしかわからない、ロマンなのでR。
もともと、どこそこの何が旨いと聞いて出向くほどマメではない。おしゃれなランチもこだわりラーメンも大方は食べ飽きたが、ここのランチは不思議と飽きない。大ぶりに切った鮭の塩焼き、野菜の煮しめ、麻婆豆腐など毎日変わる手料理や、常連客の持ち寄りのお菓子など、手作りで気取らないのがいい。きれいなカップに注いでくれる食後のコーヒーも嬉しい。
17年前まで私はこの辺りに住んでおり、家内が幼稚園の「ママ友」にここを紹介された。当時は若いママたちで大盛況で、入りきれない客を隣の母屋に上げていたほどだったと聞く。現在はのりちゃんも常連客もそれなりの年齢になり、少人数で穏やかな午後のひと時を過ごす。
数年前、家内に連れてこられて以来、私もすっかりこの店のファンになった。診療を終えて午後2時過ぎに私たちが滑り込んでも、ちゃんと待っていてくれる。最近は近所に住む1歳の孫娘 香菜を連れて行く楽しみも増えた(写真)。
職場から離れて「当たり前のご飯」で一息、これが私たちジジババの「サラメシ」だ。