竹之内 辰也
この原稿が皆さまのお手元に届く頃には、秋の学会シーズンが始まろうとしています。夏の暑さも少し和らぎ、全国各地で学術集会が開催される季節です。普段の診療から少し離れ、遠方へ出かけることを楽しみにしている先生方も多いのではないでしょうか。学会後の懇親会や、その土地の食事を含めて、学会にはどこか非日常の魅力があります。
しかし近年、若手を主体とした“医師の学会離れ”がしばしば話題になります。m3による2023年のアンケート調査では、「学会離れが進んでいる」と回答した医師は28.5%に上りました。実際、学会でお会いする他県の大学医師との雑談の中で、「若手が学会に行きたがらない」「発表を頼んでも嫌がる」といった声を耳にする機会が増えています。自分たちが若い頃は、学会といえば平日から堂々と仕事を休み、旅費付きで遠方へ行けるハッピーなイベントでした。しかし現在は、若手医師を取り巻く価値観や環境が大きく変化しています。タイパ(時間対効果)を重視する文化の中では、長時間の移動を伴う現地参加よりも、必要な情報を短時間で得られるWEB配信の方が合理的と映るのでしょう。また、専門医制度の普及により、「学会=学びの場」よりも「単位取得の場」という色合いも強くなりました。病院経営の悪化による出張費削減も、若手医師の学会参加を後押ししにくい要因かも知れません。
とはいえ、学会離れが語られる一方で、学会そのものは増え続けてきました。日本医学会加盟学会は現在145に達しており、サブスペシャリティ領域まで含めれば、その数はさらに膨れ上がります。実際、私自身が運営に携わっている皮膚外科の学会でも、会員数の伸び悩み、若手参入の減少による会員の高齢化、学術集会の演題数減少という深刻な課題に直面しています。そのため現在、専門性の近い関連学会との統合・再編に向けた協議を進めています。・・・何かどこかで聞いたような話で、まるで「学会版・地域医療構想」です。
もちろん、WEB時代になっても、現地で顔を合わせて議論や雑談をし、人脈を築くことの価値まで失われたわけではありません。学会離れを単なる若手の熱意低下として片付けるのではなく、“今の時代に学会はどのような価値を提供できるのか”を、運営側も改めて問われているのかもしれません。
(令和8年8月号)