松浜病院 精神科
渡邉 晴香
子どもが成長するにつれて、読む本の種類もどんどん変わっていきます。絵本を楽しんでいた時期が過ぎ、文字の多い児童書を読み始めると、親も自然と児童書に触れる機会が増えました。かつて自分も夢中になったはずの世界を改めてのぞいてみると、思いがけず心を掴まれてしまうことがあります。最近の私は、まさにそんな再発見の真っ最中です。
きっかけは子どもと一緒に買った児童書でした。図書館で読んで気に入ったシリーズがあるらしく、普段ならネットで買ってしまうところを、せっかくならいろいろ見てみようと久しぶりに書店の児童書コーナーを歩いてみることにしました。棚いっぱいに並ぶカラフルな背表紙が懐かしく、その中で子どもが選んだのが「わかったさん」シリーズでした。「わかったさんのマドレーヌ」「わかったさんのアップルパイ」、タイトルを見た瞬間に子どもの頃の記憶がよみがえります。わかったさんが迷い込む不思議な世界、その中で作っていたお菓子や、読んでいるときのわくわくした気持ちが思い出されました。調べてみると、シリーズは今も続いていて、新しい作品も出版されているそうです。世の中が変化する中で、変わらず続いているものがあることに懐かしく嬉しい気持ちになりました。
最近では、子どもが選んだ本を一緒に読ませてもらうのがお決まりのパターンになっています。最初は子どもが今どんな世界に夢中になっているのか、どんな言葉に笑ったり驚いたりしているのかを知りたくて読み始めたのですが、物語の展開にハラハラしたり、子どもの頃には気がつかなかったメッセージに気づいたり、気がつくとついページをめくっていました。大人になった今だからこそ感じられることもあり、子どものために買った児童書がすっかり趣味のひとつになっています。
大人になると、本を読む時間はどうしても「勉強のため」「情報を得るため」といった目的を持ってしまいがちです。そんな中で、児童書は純粋に読むことの喜びを思い出させてくれました。「読むことを楽しむため」の本が家に増えていくことが、今はとても楽しみになっています。これからも、わかったさんのように身近な世界で小さな発見をしながら、親子で本の世界を楽しんでいきたいと思います。
(令和7年12月号)