佐藤 勇
私が小学生の頃、田舎の図書館は小学校の校門の前にあった。蔦の絡まる洋館の扉を開けると、薄暗い受付があり、そこを通り抜けて書棚と書棚の間に入ると、静粛とともに独特の匂いがした。取り出した本をもって閲覧室に向かうと、窓から差し込む木漏れ日が降り注ぐテーブルが待っていた。そんな話を同じ時代を共有する同級生に語ると、「盛りすぎだ」と一笑される。しかし、学校の図書室とは全く違う世界を感じていた。
時代とともに、図書館も少しずつ役割を変えながら地域に根ざした活動をめざしている。新潟市の図書館は、大正15年に新潟市立沼垂図書館として開館し、手狭になっては場所を移しながら、平成19年6月に沼垂図書館としては閉館して、同年10月に、現在の場所に新潟市立中央図書館として開館した。“本の港”であり、“日本海側初の政令市にふさわしい図書館”といった意味合いをふくめて、公募の中から「ほんぽーと」という愛称がつけられた。
新潟市は、図書館のネットワーク化を進め、県立図書館、大学附属図書館、その他、市役所や歴史博物館などの専門機関とも連携している。また他の政令市には例のない、区ごとの図書館協議会を設置し、地域住民の参画をもとめ分権型図書館をめざすとともに、市民と協働するパートナーシップ型図書館も目標としている。
また、「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、子どもたちの読書活動をすすめるために、「新潟市子ども読書推進有識者会議」を平成21年から設置し、一次二次の「子ども読書活動推進計画」を策定した。今年度第三次の有識者会議が組織される予定である。一次二次で座長を務められた荒川正昭先生、一次と三次で参画される教育学部の足立幸子先生以外は、毎回新委員で構成されているが、私だけが幕下ながら留年を繰り返し3回目の参加となってしまった。いずれ三次計画の内容を本誌で報告したいと思っている。
これらの活動の中心に「ほんぽーと」が機能しており、従来の図書館の役割の殻を少しずつ破っている。漫画や映像、音楽といった文字情報以外の「文化」や「生活」にかかわる情報にも関心を寄せている。とりわけ“こども”と“えほん”は、「ほんぽーと」の特徴を示すキーワードである。絵本コーナーでは、紙芝居や、家では滅多に購入できない大型絵本などが充実しており、常日頃乳児健診などの場で、子どもとの遊び下手なお父さんと一緒に、日曜日にぜひ訪ねてほしいところ、と推薦している。
少し残念な点が一点だけ。駐車場の有料化は、財政難といえども若い世代のことを考えるなら再考願いたい。証明書をもらいに行くような場所ではない。用が済んだら早く出てくれというシステムは図書館にはそぐわない。せめてお子様同伴は無料化してほしい。
ほんぽーと 中央図書館
住所 | 新潟市中央区明石2丁目1番10号 |
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開館時間 | 月曜から土曜 午前10時から午後8時 日曜・祝日 午前10時から午後5時 休館日 第2金曜日、年末年始 |
(令和元年7月号)