新潟市医師会 勤務医委員会委員
亀田第一病院 消化器内視鏡センター長 理事長
渡邉 東
先日、新潟大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科学の猪又孝元先生、新潟大学大学院 生活習慣予防・健康医学講座の加藤公則先生、下越病院の末武修史先生、石曽根医院の金子洋先生とともに、「にいがたSTOP高血圧プロジェクト」に関する講演会に参加する機会をいただきました。その中で、血圧を適切に管理することが、高齢者の健康寿命の延伸にとっていかに重要であるかを、改めて強く実感しました。
本プロジェクトは、新潟県および にいがた脳心センター(新潟県脳卒中・心臓病等総合支援センター)が中心となり、「まず血圧を測る」ことを合言葉に、治療・予防・普及啓発を一体的に進める取り組みです。令和7年9月1日より開始され、県民一人ひとりが日常生活の中で血圧に関心を持ち、自らの健康を守る行動につなげることを目的としています。
具体的な目標として、循環器病に関する正しい知識の普及、血圧測定を習慣とする人の増加、血圧計を設置・配置する企業や施設の拡大が掲げられています。さらに最終的なアウトカム目標として、循環器病(脳卒中・心疾患)による死亡者数の減少を目指しており、サブ目標として2030年までに35~64歳の収縮期血圧を4mmHg低下させることが設定されています。わずか数mmHgの低下であっても、集団全体としては脳卒中や心疾患の発症を大きく抑制できることが、これまでのエビデンスからも明らかです。
高齢者が要介護、あるいは寝たきりとなる原因として最も多いのは脳卒中であり、その中でも脳梗塞が大きな割合を占めています。国内統計では、寝たきりの原因の約3割が脳卒中によるものとされており、健康寿命を脅かす最大の要因の一つです。さらに脳梗塞の最大の危険因子は高血圧であり、発症に約50~60%が関与していると報告されています。すなわち、血圧管理は単なる数値の改善にとどまらず、将来の要介護・寝たきりを防ぐための、極めて重要な介入であると言えます。
本プロジェクトには二つのキャッチフレーズがあります。一つ目は「めざせ血圧130!」で、収縮期血圧130mmHg未満を目標とするメッセージです。二つ目は「朝めし前の朝血圧」であり、家庭血圧測定の適切なタイミングとして、起床後1時間以内、排尿後、朝食前の測定を推奨しています。日常生活の中で無理なく、かつ正確に血圧を測定するための、非常に分かりやすい指針だと感じました。
もちろん、血圧管理には生活習慣の改善も欠かせません。特に塩分制限は重要であり、高血圧患者では1日6g未満の食塩摂取が推奨されています。今回の講演会を契機に、当院では推定食塩摂取量を評価できる尿検査を新たに導入しました。患者さん自身が数値として塩分摂取量を把握することで、生活習慣改善への意識づけにつながることを期待しています。
私は消化器内科を専門としていますが、専門領域にとらわれることなく、新潟県民の健康寿命延伸に寄与すると考えられる取り組みには、今後も積極的に関わっていきたいと考えています。「まず血圧を測る」という小さな行動の積み重ねが、将来の脳卒中や心疾患を防ぎ、健康で自立した生活を送る期間を延ばす─そのメッセージを、今後も多くの患者さん、そして県民の皆さまと共有していきたいと思います。
(令和8年4月号)