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新潟市医師会報より

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変遷する腎臓治療 ─尿蛋白/尿中クレアチニン比と腹膜透析支援について─

新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部 副部長
大塚 忠司

令和8年6月18日に開催されました新潟市内科医会学術講演会において、「変遷する腎臓治療」と題してお話しする機会をいただきました。本稿では、その内容を誌上に再録いたします。

はじめに

腎臓の治療は、いま大きく変わりつつあります。腎臓病は、透析や移植といった腎代替療法をまだ必要としない「保存期」と、腎代替療法の検討が必要となる「末期腎不全」とに大きく分けられます。本稿では、保存期における「尿蛋白/尿中クレアチニン比」と、末期腎不全における「腹膜透析支援」という二つのキーワードを軸に、日常診療のなかで先生方にご協力いただきたい点をお話しします。前者は「どの患者さんを、いつ腎臓専門医にご紹介いただくか」、後者は「末期腎不全になっても住み慣れた地域で過ごしていただくために何ができるか」という問いに対応します。

CKDは一つの病気ではない

慢性腎臓病(CKD)は、単一の原疾患名ではなく、腎障害または腎機能低下が3か月以上続く病態を包括する臨床概念です。具体的には、蛋白尿・尿沈渣異常・画像や病理の異常など腎障害を示す所見、または「GFRが60 mL/分/1.73 m2未満」のいずれかが3か月以上続く状態と定義され、原因(Cause)、GFR区分、アルブミン尿区分を組み合わせた重症度分類(CGA分類)で評価します。従来の慢性腎不全(CRF)より早期の段階を含む考え方で、「CKD診療ガイド2024」では患者数は推計約2,000万人、成人の約5人に1人とされ、まさに国民病といえます。

ただし、この定義をそのまま当てはめる際には、二つの注意点があります。一つは、eGFRの読み方です。eGFRは血清クレアチニン値と年齢・性別から推算する値であり、腎機能は加齢とともに生理的にも低下するため、明らかな腎疾患がなくても高齢者では60未満となることが少なくありません。もう一つは、CKDという言葉が非常に幅広い病態を含むことです。糖尿病関連腎臓病、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、膠原病関連腎症、肥満関連腎症、加齢に伴う腎機能低下など、同じCKDと呼ばれていても原因・治療・予後は異なります。CKDを早期に認識することは重要ですが、数値だけで一括りにせず、原疾患、蛋白尿、eGFRの推移、併存疾患をあわせて評価し、疾患に応じた治療機会を逃さないことが大切です。

透析患者数は減少に転じた

わが国の慢性透析患者数は2021年末の349,700人をピークに3年連続で減少し、2024年末は337,414人でした。2024年の透析導入患者数も前年より減少しています。この変化の背景には、人口構成の変化や、透析患者の高齢化に伴う死亡数の増加など複数の要因があり、治療の進歩だけによる成果とは言い切れません。その一方で、各種腎炎に対する疾患特異的治療、糖尿病治療の進歩、RA系阻害薬やSGLT2阻害薬などの腎保護療法が、CKDの進展抑制に寄与していると考えられます。これらはいずれも、腎臓の濾過装置である「糸球体」を守る治療です。

糸球体を守る治療

糸球体を守る治療は、大きく二つに分けられます。一つは、腎炎・腎症そのものに対する疾患特異的治療で、この数年で大きく様変わりしました。IgA腎症では、従来の扁桃摘出術+ステロイドパルス療法(扁摘パルス)に加え、海外で標的放出型ブデソニドやスパルセンタンが承認され、国内でも開発が進んでいます。ANCA関連血管炎に対するアバコパン、C3腎症に対するイプタコパンをはじめ、膜性腎症やループス腎炎などでも病態に応じた治療選択肢が広がっています。糖尿病関連腎臓病でも、治療薬の選択肢が大きく増えました。いずれも腎臓専門施設で導入する治療ですが、その前提として原疾患が診断されていることが欠かせません。

もう一つは、先生方の日常診療により直結する腎保護薬です。糸球体は血液から原尿を濾しとる濾過装置ですが、糸球体内圧の上昇(過剰濾過)という過度の負担が続くと、糸球体は肥大して代償し、やがて障害されます。たとえば肥満では、処理すべき血液量が増えても、糸球体の数は生まれつきおおむね決まっているため、一つひとつの糸球体に過剰な負荷がかかります。この糸球体内圧の是正に働くのがRA系阻害薬やSGLT2阻害薬であり、GLP-1受容体作動薬にも複数の機序を介した腎保護効果が期待されます。実際にEMPA-KIDNEY試験では、エンパグリフロジンが腎疾患進行または心血管死の複合リスクを低下させ、eGFRの慢性期低下速度も緩やかにすることが示されました。

蛋白尿は糸球体からのサイン

では、その糸球体の障害を、日常診療のなかでどう見つけるか。手がかりになるのが蛋白尿です。健康な腎臓から排泄される蛋白はごく少量で、尿沈渣中の赤血球も通常はわずかです。ただし、運動、発熱、脱水などによる一過性蛋白尿や、尿路疾患など糸球体以外に由来する異常もあるため、まず再検で持続性を確認します。そのうえで持続する蛋白尿、特にアルブミン尿は、糸球体障害や過剰濾過の重要なサインとなります。

その背景には、糸球体内圧が高い病態(高血圧や肥満)、糸球体の構造が脆弱な病態(菲薄基底膜症やアルポート症候群)、さらに糖尿病、血管炎、悪性腫瘍、薬剤などに伴う腎障害があります。また、糸球体由来のもの以外にも、尿細管性・間質性、オーバーフロー性、腎後性の蛋白尿があり、鑑別が必要です。腎生検や血液・尿検査、画像、病歴・家族歴から原疾患を見極めることで、疾患に応じた治療や、背景にある全身疾患の発見につながります。蛋白尿は、その糸口となるマーカーなのです。

尿検査を地域で活かす

では、尿検査をどこで行うか。健診や医療機関に加え、セルフチェックという選択肢があります。当科では近隣の薬局グループと連携し、患者さんが尿試験紙と「尿検査記録帳」を用いて早朝尿を定期的にセルフチェックする仕組みを運用しています。具体的には、早朝尿で(2+)以上が3日続いた場合に患者さんご本人から日中の内科外来へお電話いただく、といった簡便な取り決めを薬局と共有し、必要に応じて外来予約の前倒しを相談します。これにより、ネフローゼ症候群などの経過観察において、必要以上に頻回な受診をお願いせずに済むようになりました。

ただし、尿試験紙には限界もあります。主としてアルブミン濃度に反応する半定量検査で、1枚100円程度と安価かつ簡便な一方、わかるのはあくまでその時の尿の「濃度」だけです。水分を多く摂れば薄い尿に、脱水では濃い尿になるため、同じ病状でも評価が分かれてしまいます。

尿蛋白/尿中クレアチニン比という物差し

この濃度依存という欠点を補うのが、尿蛋白/尿中クレアチニン比(尿蛋白/Cr比)です。随時尿の尿蛋白濃度を尿クレアチニン濃度で除し、g/gCrで表すと、1日尿蛋白量(g/日)のおおよその推定値になります。随時尿で尿蛋白定量と尿クレアチニンを同時に測定していただければ計算できますので、蓄尿は必要ありません。たとえば尿蛋白濃度が200 mg/dL、尿クレアチニン濃度が100 mg/dLであれば、尿蛋白/Cr比は2.0 g/gCrとなり、1日およそ2gの蛋白尿と推定します。ただし、この換算は1日の尿中クレアチニン排泄量をおよそ1gとみなす考え方に基づくため、筋肉量、年齢、性別などの影響を受けます。とくに筋肉量の少ない高齢者では、実際の蛋白尿量より多めに見積もられることがあり、慎重な解釈が必要です。

この物差しを使うと、ご紹介の目安も数値で示せます。日本腎臓学会の紹介基準では、糖尿病関連腎臓病を除くCKD(腎炎や高血圧性腎硬化症など)において、0.50 g/gCr以上を高度蛋白尿とし、腎臓専門医への紹介対象としています。ただし、この値だけで糸球体疾患と断定するのではなく、再検による持続性の確認と、血尿、eGFR、全身所見を含む評価が必要です。蛋白尿の増加は、腎機能低下、心血管イベント、全死亡のリスク上昇と関連します。尿蛋白/Cr比0.50 g/gCr以上が持続する方は、いつでも当科にご紹介ください。診断と治療方針を整理したうえで、逆紹介もお願いしております。

腎代替療法と腹膜透析

ここからは末期腎不全の治療選択のお話です。腎代替療法には、血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、腎移植があり、これとは別に、透析や移植を行わず症状緩和と生活の質を重視する保存的腎臓療法(CKM)があります。PDは主に自宅で行うため通院は一般に月1回程度で済み、持続的で緩やかな透析であることから循環動態への負担が比較的小さいのが特長です。一方、施設HDは通常、週3回の通院が必要で、1回あたり4~5時間を要します。ただし、2024年末の慢性透析患者に占めるPD患者は約3%にとどまり、残る大部分を施設HDや血液透析濾過(HDF)などが占めています。腎移植を受けられる方はさらに限られるのが実情です。

かつてPDは、腹膜の劣化や被嚢性腹膜硬化症(EPS)への懸念から、「若くてライフスタイルを重視する人が、せいぜい5年ほど行う治療」というイメージでした。しかし超高齢社会を迎えたいま、PDは「最後まで在宅で過ごす」ための選択肢として見直されています。通院や拘束時間、穿刺の痛みが負担となる高齢の方にとって、在宅で緩やかに続けられるPDの価値は、むしろ高まっています。中性化透析液の普及によりEPSの発症リスクはほぼ無くなった可能性がありますが、長期にPDを継続している方や腹膜炎の既往がある方では、現在も注意が必要です。わが国の腹膜炎発症率はおおむね0.2回/患者・年と低い水準にありますが、腹膜炎は依然としてPD離脱の重要な原因であり、予防と早期治療が欠かせません。

SDMと多職種連携、そして地域へ

どの治療を選ぶかは、医療者と患者さんが情報と価値観を共有しながら一緒に決める、Shared Decision Making(SDM)が基本です。当院ではまず、患者さんに実際のHD・PDの様子を見学していただきます。そのうえで、血液浄化療法部の看護師が腎疾患指導外来で聴き取った情報を記録し、多職種カンファレンスで共有しています。カンファレンスには各職種があらかじめ意見を持ち寄り、外来では見えにくい生活背景やご家族の状況まで共有することで、より実態に即した治療選択につなげています。こうした過程を経て、当院では約40%の患者さんがPDを選択されています。

制度面でも追い風があります。令和8年度診療報酬改定では、腎代替療法診療体制充実加算(20点)が新設され、人工腎臓の所定点数は20点引き下げられました。この加算の施設基準には、患者さんの適応に応じた腎代替療法の説明を、病状や希望に合わせて繰り返し行うことに加え、災害対策、PDまたは腎移植に関する実績、シャントトラブル時の連携体制などが含まれます。また、医療機関間の連携によるPD管理を評価する仕組みも設けられました。

こうした制度面の後押しに加え、日本腹膜透析医学会の連携認定医制度や、家族・訪問看護・介護施設が介助するアシストPDの普及もあり、かかりつけ医・在宅医の先生方がPDを支える体制が整いつつあります。導入や日々の管理の中心は腎臓専門施設が担いますので、まずは「PDという選択肢がある」ことを念頭に置いていただくだけでも十分です。そのうえで薬局、訪問看護、訪問診療、ご家族と治療方針を早期から共有しておくことは、末期腎不全となった際の円滑な支援につながります。緩和ケアも含め、「最後までお家で」を地域で支えていきたいと考えています。

おわりに

最後に、三点をお願いして結びといたします。第一に、尿蛋白/Cr比0.50 g/gCr以上が持続する場合を、ご紹介の目安としてください。第二に、腹膜透析という選択肢がありますので、末期腎不全が見えてきた際には、早めにご紹介ください。第三に、診断や治療方針が定まった後は、ぜひ地域で最後まで診療を継続していただきたいと思います。腎臓病の診療は、保存期も末期腎不全も、地域の先生方との連携があってはじめて成り立ちます。当院の腎臓内科では毎日新患外来を開いておりますので、気になることがあればお気軽にご相談いただければ幸いです。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

文献

1)日本腎臓学会編:CKD診療ガイド2024.東京医学社,東京,2024.

2)日本腎臓学会編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,東京,2023.

3)日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在).日本透析医学会雑誌,58:524-590,2025.

4)The EMPA-KIDNEY Collaborative Group: Empagliflozin in patients with chronic kidney disease. N Engl J Med, 388: 117-127, 2023.

5)Fulks M, Stout RL, Dolan VF: Urine protein/creatinine ratio as a mortality risk predictor in non-diabetics with normal renal function. J Insur Med, 43: 76-83, 2012.

6)日本透析医学会編:腹膜透析ガイドライン2019.医学図書出版,東京,2019.

7)厚生労働省:令和8年度診療報酬改定の概要(医科全体版).2026.

(令和8年9月号)

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