小田島 あゆ子1)、葭原 明弘1)、石上 和男2)、中村 健1)、
松田 正史3)、松田 浩一郎4)、武藤 由美子5)、滝沢 杉子6)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座
2)新潟医療福祉大学 医療経営管理学部
3)松田内科呼吸器科クリニック
4)松田歯科クリニック
5)新潟市北地域保健福祉センター
6)新潟市北区役所 健康福祉課 高齢介護係
緒言
近年、独居高齢者は男女ともに急激に増加しており、新潟市の65歳以上の高齢者のうち単独世帯が占める割合は3割を超えている1)。独居高齢者は同居高齢者と比べて、地域活動の参加が少ない2)。また、果物・野菜・魚の摂取量が低く3)、食品摂取多様性が低下している4)ことが報告されている。独居高齢者のうち、見守りが必要な者に対しては友愛訪問事業の利用が勧められており、独居高齢者の安否確認および孤独感の解消を目的に民生委員が月1回、定期的に自宅訪問する活動がある5)。独居高齢者における健康状態の実態については報告されているが、友愛訪問利用者を対象とした報告は見当たらない。したがって、本研究は独居高齢者における友愛訪問利用者の口腔健康状態と栄養摂取状態の実態について明らかにすることを目的とした。
対象および方法
1.対象
新潟市北区役所が保有する2022年度高齢者実態把握名簿から、南浜地区在住の65歳以上の独居高齢者563名を選出した。死亡者および施設入所者を除外した361名に対して、調査協力依頼を郵送した。調査協力依頼に返信があった者に加え、南浜地区民生委員および地域医療機関からの紹介によって、62名(17.2%)から調査協力の同意が得られた。
2.調査方法
質問紙調査および口腔機能検査を実施し、質問紙の項目は年齢、性別、要介護認定、指輪っかテスト(サルコペニアのリスク)、友愛訪問の利用、身長および体重(BMI)、運動および外出の頻度、主観的健康感、主観的経済状況および主観的生活状況とした。また、食生活習慣に関連する項目は食料品の買い物の状況、食事サービスの利用、共食の頻度、1日の食事回数、食事づくりの頻度、食欲、食事の楽しさ、主観的食生活満足度および食品摂取多様性スコア(DVS)とした。口腔機能検査の項目は主観的咀嚼能力、現在歯数、舌圧および咬合力とした。舌圧測定は舌圧測定器(JMS舌圧測定器、ジェイ・エム・エス、広島)を使用し、舌圧プローブを内圧調整後に対象者の口腔内に挿入し、硬質リングを前歯で軽く把持させ、約7秒間舌でバルーンを押し潰し続けるよう指示した。舌圧は3回測定した最大値を評価した。咬合測定は練習用シートを用いた試験を1回、フィルムを用いた本試験を1回行い、咬合力分析ソフト(バイトフォース アナライザソフト、ジーシー)を用いてフィルムを解析して評価した。
3.分析方法
独居高齢者における基本属性、食生活習慣および口腔機能の実態について集計し、友愛訪問利用者と非利用者の2群に分け、Fisherの正確確率検定、Studentの t 検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。すべての統計解析はSTATA version 16.0 for Windows(StataCorp LP、Texas、USA)を使用し、有意水準は5%とした。なお、本研究は新潟大学の人を対象とする研究等倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号2023-0050)。
結果
友愛訪問利用者および非利用者の比較した結果を表1に示す。友愛訪問利用者の平均年齢は81.9±6.6歳であり、非利用者の77.4±5.7歳と比較して、有意に高かった(p=0.007)。また、「ほぼ毎日運動している」と回答した者の割合について友愛訪問利用者は30.4%と、非利用者の61.5%と比較して有意に低かった(p=0.034)。その他の項目においては2群間に統計学的有意差は認められなかったが、友愛訪問利用者は非利用者より女性の割合が1.5倍、サルコペニアのリスクありの割合が2倍も高い傾向が認められた(p=0.052, 0.054)。一方で、主観的健康感、主観的経済状態および主観的生活満足度においては2群間に大きな差は認められなかった。
次に、食生活習慣について友愛訪問利用者および非利用者の比較した結果を表2に示す。いずれの項目においても2群間に統計学的有意差は認められなかったが、友愛訪問利用者は非利用者より食料品の買い物が不自由な者の割合が2倍にも関わらず、いつも食事づくりをしていない者の割合は半分以下であった(p=0.145, 0.138)。一方で、食欲の有無、食事の楽しさ、主観的食生活満足度および食品摂取多様性においては2群間に大きな差は認められなかった。
最後に、口腔機能について友愛訪問利用者および非利用者の比較した結果を表3に示す。友愛訪問非利用者の舌圧は32.6±9.5kPaに対して友愛訪問利用者は26.8±10.4kPaであり、有意に低かった(p=0.029)。
考察
本研究の結果から、友愛訪問利用者は非利用者より年齢が有意に高く、サルコペニアのリスクを有する傾向があった。友愛訪問利用者は非利用者より運動習慣がある者の割合が有意に低く、運動習慣の有無がサルコペニアのリスクと関連している可能性が考えられた。一方で、友愛訪問利用者は食料品の買い物が不自由な者が4割を占めていたものの、いつも食事づくりをしている者は9割を占めており、食品摂取多様性については友愛訪問利用の有無で有意な差は認められなかった。高齢女性において食事を自分で作ることと食品摂取多様性の高さは関連があることが報告されており6)、本研究の友愛訪問利用者の8割が女性であることから同様の傾向が考えられた。加えて、高齢女性は近所や親戚から食べ物をもらうという手段的なソーシャルサポートが食品摂取多様性を高める要因であると報告されており6)、独居高齢者においてはソーシャルサポートの重要性がさらに高まる可能性が考えられた。次に、口腔機能について友愛訪問利用者(81.9±6.6歳)の現在歯数は17.9歯であり、令和6年度歯科疾患実態調査7)における75歳以上79歳未満(19.5歯)、80歳以上84歳未満(19.1歯)、85歳以上(14.5歯)と同程度、維持できていると考えられる。友愛訪問利用者の現在歯数は維持されており、喪失歯に対しては歯科補綴処置がされている者が多かったが、咀嚼能力の低下を自覚している者は8割を占めていた。咀嚼機能は現在歯数、舌筋および咀嚼筋の維持が必要となる。したがって友愛訪問利用者において、今後は現在歯数の維持のみではなく、口腔周囲筋の機能維持を目的としたオーラルフレイル予防が必要であると考える。
結論
本研究では独居高齢者における友愛訪問利用者の口腔健康状態と栄養摂取状態の実態について調査を行った。その結果、友愛訪問利用者は非利用者より平均年齢が高く、運動習慣がある者の割合が有意に低いことが明らかになった。友愛訪問利用者における食生活習慣は非利用者と有意な差は認められなかったものの、オーラルフレイル予防の必要性が示された。
謝辞
本研究にご協力いただいた南浜地区まちづくりセンターおよび南浜地区民生委員の皆様に感謝いたします。また、本研究は新潟市医師会地域医療研究助成(支援番号GC04320232)の支援を受けて実施しました。
参考文献
1)内閣府.令和6年度高齢者社会白書.“第1章 高齢化の状況”〈https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_3.html〉.(2025年9月11日)
2)久保温子,村田 伸,上城憲司:独居高齢者と非独居高齢者の特徴に関する大規模調査.厚生の指標,61(11):21-26,2014.
3)Ramic E, Pranjic N, Batic-Mujanovic O, Karic E, Alibasic E, Alic A.: The effect of loneliness on malnutrition in elderly population. Med Arh, 65(2): 92-5, 2011.
4)Hanna KL, Collins PF.: Relationship between living alone and food and nutrient intake. Nutr Rev, 73(9): 594-611, 2015.
5)新潟市社会福祉協議会.“友愛訪問事業”〈https://www.syakyo-niigatacity.or.jp/advanced-age/friendship〉.(2025年9月11日)
6)吉葉かおり,武見ゆかり,石川みどり,横山徹爾,中谷友樹,村山伸子:埼玉県在住一人暮らし高齢者の食品摂取の多様性と食物アクセスとの関連.日本公衆衛生雑誌,62(12),707-718,2015.
7)厚生労働省.“令和6年歯科疾患実態調査結果の概要”〈https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001512690.pdf〉.(2025年9月11日)

表1 友愛訪問利用者および非利用者の比較(基本属性・生活習慣・主観的満足度)

表2 友愛訪問利用者および非利用者の比較(食生活習慣)

表3 友愛訪問利用者および非利用者の比較(口腔機能)
(令和8年9月号)