助教 和泉 大輔
新潟市医師会の会員の皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃より循環器内科学教室に格別のご支援を頂き感謝申し上げます。循環器内科学教室は、南野徹教授が着任されてから6年が経過し、着実に診療実績、研究実績を積み重ねています。
臨床面では、現在、病棟は三つの診療グループ(虚血再生グループ、心不全グループ、不整脈グループ)が分担し、専門性を活かして日々の診療を行っています。
虚血性心疾患に対しては、多くの経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行しています。PCI件数は年々増加し2018年は269件となりました。冠動脈CT、血管内超音波、光干渉断層法、プレッシャーワイヤ、ロータブレーター、方向性冠動脈粥腫切除術などを駆使し、慢性完全閉塞や複雑病変に対しても良好な成績を収めております。循環器救急については、高次救命災害治療センターの協力のもと、ドクターヘリも含めた24時間対応が確立したものとなっています。
心不全分野では、心筋症、肺高血圧症、心臓リハビリテーションなどについて精力的に取り組み、来るべき構造的心臓病に対するカテーテル治療や補助人工心臓植え込みに向けての準備を整えています。2017年11月より、植込型補助人工心臓管理施設に認定され、人工心臓実施施設への認定を目指し準備を進めています。また、左室流出路狭窄に対する経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)、慢性血栓閉塞性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)、重症大動脈狭窄症に対するバルーン大動脈弁形成術(BAV)などにも精力的に取り組んでおります。近年、MitraClipと呼ばれる僧帽弁閉鎖不全症に対する新たな低侵襲カテーテル治療(経皮的僧帽弁接合不全修復術)が開発され当科でも導入の準備を整えています。
不整脈疾患については、診断とともに経皮的カテーテル心筋焼灼術(アブレーション治療)(203件)、植え込み型除細動器治療および心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)などの様々な侵襲的治療について積極的に取り組み良好な成績を収めています。経皮的カテーテル心筋焼灼術については、当科の特色として心房細動症例の他に心室頻拍性不整脈症例に対する治療も多く、致死性不整脈を発症した患者様の緊急搬送や転院が増加しています。また、突然死を予防する完全皮下植込み型除細動器治療や、心房細動に対するクライオおよびホットバルーンアブレーション治療、リードレスペースメーカ、マルチポイントペーシング機能を持つ両心室ペースメーカなどの新たな治療法を早期に導入し、情報発信に努めています。不整脈臨床研究の面では、遺伝性不整脈、心臓再同期療法の有効性向上、心原性脳塞栓症・全身性塞栓症の2次予防、心室細動・心室頻拍のアブレーション治療、心室細動・心室頻拍への予防的介入治療および治療薬の検討、抗凝固療法と生理的凝固阻止因子の連関、細動例の心筋電気的・構造的リモデリングなどを課題として研究を進め、今後のよりよい治療に向けた成果が実を結びつつあります。
診療、教育、臨床研究のいずれの面においても診療ハードウェアの整備は重要な課題です。現在、当科では関連する各科・各部門と共同で診療ハードウェアの整備に取り組み、2018年8月にアンギオ装置の更新が完了しました(写真1)。アンギオ装置の更新により冠動脈形成術や不整脈のアブレーション治療をより円滑に行うことが可能となり、入院待機期間の短縮につながることを期待しています。
また、当科では関連する各科・各部門と共同で今年度のハイブリッド手術室の新設に向けて準備を進めています。ハイブリット手術室の新設については、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)などの新たな医療の提供や、高侵襲治療における早急なバックアップ体制の構築などの面で、患者さんへのより良い治療と高い安全性を提供できるものとして期待しています。
基礎研究ならびにトランスレーショナルリサーチの面では、教室の研究の主力となっている先進老化制御学講座において、全身の老化シグナルや代謝制御という切り口から、心血管疾患をはじめとする加齢疾患の研究を行っております(写真2)。日本医療研究開発機構(AMED)の老化研究拠点にも加わり、本研究領域の発展に努めています。研究の対象となる臓器は心血管に限らず多岐にわたりますが、様々な臓器の恒常性を解明し制御することで、次世代の治療コンセプトの開発や医療概念の構築を目指しています。この1年間も数多くの受賞、国際学会への採択、国内外への招聘講演がありました。医学部学生の教育にも積極的に取り組み、循環器内科海外基礎配属プログラムを活用して、医学部学生の海外への基礎研究短期留学を支援しています。
循環器内科学教室では若手研修医や学生への教育のため、研修医や学生向けのセミナーを開催しています。2017年度より、新たな試みとして臨床推論セミナーを開催しています。初期研修医、若手循環器内科医がディスカッサーとなり名推理を見せてくれています。四月には、春の循環器セミナーを開催し、心電図、心エコー、急性冠症候群、心臓リハビリテーションなどについて臨床現場で活躍するスタッフによるレクチャーを行っています。例年、総勢100人を越える参加があり研修医や学生からは活発な質問があり、大変良い企画と考えています。循環器内科学教室では引き続き熱意をもって教育を行うことで今後のよりよい医療を担っていく医師を育てていきたいと考えています。新潟市医師会の会員の皆様におかれましては、引き続きご支援ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
写真1 血管撮影室2番に更新されたアンギオ装置
Dynamic Coronary Roadmapなどのカテーテル治療をサポートする最新の機能を備える
写真2 先進老化制御学講座近景
(令和元年7月号)