高橋 美徳
山と積まれた路傍の雪が、巻き込んでいた小砂利やごみを路肩に残して急速に消えていきました。自転車乗りにとってはスリップ事故に十分注意が必要な時期です。ある程度の降雨であれば雨具を着こんで乗るわけですが、本降りになるとグラス越しの視界が不十分になるので、故三木のり平さんのように下へずらしてフレームの上から見て乗るようにしています。
氷雨、春雨、小糠雨、緑雨、五月雨、梅雨、夕立など雨にまつわる言葉が日本語には沢山あり、実に多彩に表現されてきました。日本人が農耕を営む上で雨に対して敏感な感性を培ってきたためでしょう。
「水の惑星」といわれる地球の水は総量13億5千万立方トンと推定されています。その97.5%が海水で、淡水は僅かに2.5%、さらに氷や汚染水をのぞくと実際に人間が利用できる水は0.01%といわれています。人口増加や汚染水の増加のため利用できる淡水は減り続けており、加えて地球温暖化により乾燥地域では砂漠化が進行し、多雨地域ではゲリラ豪雨や洪水が増加しています。
先日私の好きな某テレビ番組で東京・新宿の雨水を濾過してビルの屋上に大きなビオトープを作ろうという企画を放送していました。木樽に敷き込んだ砂、炭、小石を通して雨樋で集めた雨水を濾過したところ、一見透明になり不純物が除去出来たのですが、実はpHが5.5より低く生物が生息できない水だったのです。昨年、映画『ブレードランナー2049』が公開されましたが、そこに酸性雨が降りそそぐ荒廃した未来の地球が描かれています。酸性雨は河川や湖沼、土壌を酸性化し、自然生態系を破壊します。さらにコンクリートを溶かし、金属も腐食させて人工建造物を破壊します。これは、あたかも地球を産業革命前にまで戻そうとする自浄作用のようです。雨は穏やかに大地に降り注ぎ、生き物に恵みを与え続けるものであってほしいものだと思います。