長野 泰甫
最近高齢になると運転免許証を取得するにも知能の程度を調べる検査が義務づけられている。知能の働きを調べるのに現在と同じような検査は、小生が知る限り遅くとも1962年に米国では既に医師の診察に使用されていた。例えば数字の桁の数を色々変えて記憶してもらい記銘力をみたり、記憶した数列を後方からも言ってもらったりするのである。また100から7を引いてもらう検査(7series、serial sevensと呼ばれていた)もよく使われていたと思う。
勿論今日の日付、曜日、現在いる場所も聞かなければならなかった。更に諺の意味を尋ねる検査もあった。一例を挙げれば、“A stitch in time saves nine.”この諺は日本では近年あまり用いられない様であるが落語で説明すると
大家さん:おい熊さんや、今日出来ることを明日に延ばしちゃいけないよ。「今日の一針 明日の十針」てえ諺を知ってるかい。
熊さん:いや、聞いたこともありませんねえ、どういう意味ですかい。
大家さん:西洋にもあるんだよ。「いい時に一針布や皮膚を縫っておけば、後で九針節約できる」意味は分かるだろ。
熊さん:なるほどねえ、日本にも、西洋にもいいことを言う人はいるもんですねえ。
大家さん:熊さんや、急ぐことでもないが八つぁんにも教えて上げなさい。
熊さん:急ぎますよ、あっしはこういうことは急ぐ事にしてるんです。おーい八つぁん今日の一針明日の十針てえ諺を御存知かい。西洋にもこれこれしかじかあるんだがねえ。
八つぁん:御存知も何も知らねえなあ。だけどおかしいじゃあねえかい。足すと日本じゃあ十一になり、西洋では十てえのはどういう訳だい
熊さん:八つぁんこういう事はだねえ、変に頭を回しちゃあいけねえよ。素直に「今日出来ることは明日に延ばすな」ととりなよ。
八つぁん:昨日から肩が凝って頭を何回も回したのがいけなかったかなあ
皆様の貴重なお時間とお目ゝを汚してすいません。お後がよろしいようで。
(平成30年10月号)