高橋 美徳
先日、スマホと飲み物を両手に持った女子大生が運転する電動アシスト付き自転車が、約10キロの速度で高齢歩行者と衝突した事故の判決がおりた。左耳にはイアホンも入っており、視覚と聴覚がほぼ奪われた状態で移動していたことになる。電動アシスト自転車は重量が25キロ以上のものが多く、回避行動なしで人と衝突すれば、低速であってもかなりの衝撃であったと推定できる。
自転車は道路交通法で軽車両に分類され、高齢者や子供が運転者である場合や安全のために止むを得ない場合以外では車道を通行するのが原則である。最近では車道左にブルーレーンが設けられ、自転車専用通行帯と思いがちだが、矢印型の自転車ナビマークなるものもあって、法令上は自転車を保護する意味はないのだそうだ。自動車ドライバーに対してアピールになるので、露骨な幅寄せやあおり運転をするドライバーは減ると思うが、公道上では不快な経験をすることも多い。
自転車に乗る側も、逆走や信号無視など命に関わるルール違反が目立つ。傘さし運転やスマホ運転は正面衝突になりかねない。自転車通行に限らず交通量の多い場所では、周りに通行者の意図を知らせ続けなくてはならない。私の場合、ヘルメットで自転車移動の本気度をアピールし、バックミラーを使って後方にも注意を向ける。大型車両が来た場合、一時歩道に上がってやり過ごすようにしている。できるだけ手信号を出して意図を汲んでもらえるように心がけているつもりだが、常にというわけではない。赤信号で停車している自動車の脇をすり抜けて、我先に信号直前まで進む自転車もあるが、私は一度追い越された自動車は追い越さないようにしている。車の運転者にとって気を使ってやっと追い越した自転車に、赤信号のたびに追いつかれ追い越されるのは良い気分でないことを知っているからだ。公道上では「お先にどうぞ」のAfter youと「お互い様」のShare the roadを心がけている。
(平成30年10月号)