西條 康夫
都市部での生活が長いせいか、林が恋しい。時々、低山の林の中を歩きに出かける。次第に汗ばんで無心に歩くようになる。水がおいしい。
できるなら、杉や松の木など針葉樹ではなく、広葉樹の雑木林がいい。
春は、柔らかな新緑の葉が芽吹いて、木々の間に、ぽつぽつと山桜やつつじが咲いている。根元には残雪がある。夏は、むせるような濃い緑の葉や木々の薫りが充満して、空気がおいしい。秋は、燃えるような紅葉が一面を覆い尽くす。秋の終わりには、落ち葉が風に吹かれて、カサカサ音をたて、うら寂しい。冬は、葉が落ちた木々と雪だけで静寂におおわれている。ウサギや鹿の足跡だけが命を感じさせる。
仕事がひと段落したら、木々に囲まれた場所で静かに生活したい。雑木林の小高い山の麓に小さな家を建てて、住みたい。雑木林に時々出かけて、山菜やキノコ採りを楽しみたい。キャンプもいい。家の前には小さな畑を耕して野菜を作りたい。家の前に小川があれば完璧だ。
(平成31年5月号)