勝井 豊
新潟市西区の赤塚地区は以前はタバコの産地で、夏になると赤塚から角田までが一面のタバコ畑になっていたが、喫煙人口の減少に伴いタバコの代わりにスイカが生産されるようになった。スイカの収穫は7月下旬には終わり、その後に栽培されるのが大根である。
8月中旬のまだまだ厳しい暑さが続いている頃に種まきがおこなわれ、きれいに作られた畝に、発芽した緑色の大根の苗が点々とみえてくる。そしてどんどんと成長して、10月になると収穫が始まる。あっという間に立派な大根が出来上がる様子は、まるで魔術のようである。
この大根は根元から先端までが同じ太さで、しかも大きく成長している。業務用の需要に応じて加工用に生産されており大半が漬物になるそうで、100トンも入るような大きな樽の中に大量の大根がぎっしりと並べられているのが、新聞で紹介されていたことがあった。
砂地にスプリンクラーの組み合わせが、スイカや大根の栽培に適しているのであろうが、ここに至るまでには、大変な苦労があったに違いないと思っている。ところが最近は耕作が放棄された畑を所々で見かけるようになった。
恐らくは耕作者が高齢化してしまい、後継者もいないために止むなく耕作を放棄してしまったのであろう。農業は基本的には天候に左右されるために、生産にはリスクがともなううえに、大根の価格も市場の動きにより必ずしも安定していないであろう。そうしたことが耕作の放棄に繋がっているのであろうが、同じようなことは、町のなかの商店街や開業医の世界にも起きているのではないだろうか。
(令和2年10月号)