勝井 丈美
8月18日 伊丹から幼馴染みが新潟にやってきた。親兄弟がみんな亡くなって、5日遅れのお墓参りが目的だった。「実家だと思ってわが家に泊まって」と言ったら、「コロナのことがあるから、ホテルを予約してある」と。ささやかながら家で私の手料理を食べていただいた。楽しい語らいの中で、「原田マハのアート小説ばかり読んでいるの。70歳でリタイヤしたら、オランダのゴッホ美術館へ行くのが夢」と言っていた。原田マハのアート小説?
8月23日 新潟市美術館で式場隆三郎展を見た。その中にゴッホの有名作品のレプリカ10枚くらいの展示があった。式場先生が大衆にゴッホを紹介したくて、レプリカを作らせたとか。帰り際にふらっと売店を覗いてみたら、原田マハのアート本が目に留まった。彼女は作家になる前には美術館でキュレーターをしていたらしい。
9月7日 友人と定例のブックレビューを某レストランの個室でやった。友人から紹介された本は『キネマの神様』。山田洋次監督が志村けんを主役に据えて映画『キネマの神様』を撮る予定だったことは知っていたが、その原作本の作者が原田マハだったことは知らなかった。小説『キネマの神様』は面白くて一気に読破した。映画とギャンブルが無類に好きで、家族に迷惑ばかりかけているけど、可愛げのあるダメ親父のイメージは志村けんにピッタリだったのに、残念でならない。
9月18日 新潟日報の文化面を開いたら、「今月の随想」に原田マハの顔写真と「芸術は必要不可欠」というエッセイが。1か月の間に意図したわけじゃないのに4回も原田マハに出会うとは。
(令和2年10月号)