田村 紀子
昨年はなぜか我が家には珍客が多かった。
まずはカラス。4月のこと、やけにカラスの鳴き声が近いな、と思っていたら庭の松の木に大きなカラスの巣が出来上がっていた。窓を開けると「ギャーギャー」鳴いて、1羽のカラスが巣から飛んで行った。それからというもの、朝はまだ暗いうちから鳴き始め、私が庭に出ると巣から飛び立ち、電線や近所の屋根に止まり、電線やアンテナをカツカツ音をたててつっついていた。調べたところ、それはカラスの威嚇行動とのこと。私は庭にカラスがいることが嫌で、追い払おうとして、巣のある松の木を揺らしたり、案山子を作ったりもしたが無駄だった。ちょうどその頃、ある患者さんがゴミ捨場でカラスに襲われ、顔に怪我したと言っていた。その人はベランダにいたカラスを1回追い払っただけなのに顔を覚えられたとのこと。ネットでは子育て中のカラスは人が巣に近づいただけでも襲ってくると書いてあった。怖くなって結局は業者に依頼し、巣を撤去してもらった。
次は蟻。夏のある日、トイレの壁に蟻の行列ができていた。出所はどこか調べたら外壁の下にセミの死骸があってその付近のようだった。即セミの死骸は捨てた。その後薬物入りの餌を置き、1週間で何とか除去できた。
次はスズメバチ。夏に植木屋さんが見つけたもので「スズメバチの巣ありましたよ。巣は撤去しましたが、多分戻ってきますよ。巣のあった木の剪定はやめました」とのこと。また巣を作られると嫌なので、キンチョール片手に巣のあった木の枝を剪定鋏で落としていたら、大きな羽音をたてて2匹の蜂が攻撃してきた。家の中に逃げ帰ったが、素人は手を出してはいけないと感じた。これまた薬物入り餌の入った容器を木に吊り下げた。その後スズメバチは戻ってきていない。
私は無防備でカラス、蟻、スズメバチに直接対峙したが、夫はあまり気にしておらず、そのうちいなくなるだろうと動じていなかった。が、私があまりにそれらに対してギャーギャー騒ぎ、カラス的にうるさいと思ったのか、ホームセンターから様々な忌避剤や薬物入りの餌を買い求めてしかけてくれた。結局はそれらが一番安全で効果があった。
最後はこうもり。ある秋の日、トイレの換気扇の外に巣を作ったらしい。小さな黒い丸いものが何個かトイレの床に落ちていて、何かの糞とわかったが、どこから落ちてきたのかわからなかった。ある日、トイレの天井に小さな黒いものが張り付いているのをみつけた。手に取って突起らしきものを引っ張って広げたらこうもりの死骸だった。変なウィルスを持っているかもしれないと付近を念入りに消毒した。こうもりは1cmの隙間があれば巣を作るとのこと。カラス、蟻、スズメバチ、こうもり、とよくまあやってきてくれたものだ。コロナ以外の戦いにもけっこう疲れた1年だった。