木村 洋
今年7月から大阪を皮切りに東京~名古屋と巡回する「ゴッホ展」が、また9月からは神戸~福島~東京を巡回する「大ゴッホ展」も開催されています。
フィンセント・ファン・ゴッホ(以下ゴッホ)は誰もが知る世界的な画家で、とても個人では原画を購入できない作家です。しかし生前には一枚も絵が売れず不遇のうちに自ら命を絶ったことは良く知られています。彼の絵が世に出ることとなったのは弟テオ・ファン・ゴッホ(以下テオ)とその妻ヨーの存在があったことは有名な話です。テオはゴッホとの手紙を保管しており、売れなかった絵もほとんどを保存していたといわれます。そのテオも兄の死を追うように翌年に亡くなっています。しかし、テオの死後、その妻ヨーがゴッホとテオとの往復書簡と絵を世に出すこととなりました。そこに克明にゴッホの思い、テオの思いが残されています。その経緯に関しては『ゴッホの手紙・絵と魂の日記』(アンナ・スー:西村書店)や『ゴッホの手紙』(小林秀雄:新潮文庫)に詳しく記載されています。
また、ゴッホはパリで印象派に影響を与えたといわれるジャポニスムに触れ、浮世絵に傾倒し、浮世絵の模写や浮世絵を背景にした絵をいくつも残しています。例えば「タンギー爺さん」や耳を切り落とした後の自画像の背景に浮世絵を書いています。
「ゴッホ展」にはゴッホの手紙の展示があるようですし、「大ゴッホ展」には炎のような荒々しいゴッホだけでなく、落ち着いた「アルルの跳ね橋」や「夜のカフェテラス」の展示があるなど二つの展覧会それぞれに特徴があります。ゴッホの直筆の手紙に触れてみたいと思いますし、フランスを旅した時に訪ねた「アルルの跳ね橋」や「夜のカフェテラス」の景色にもまた会いたいものです。
(令和7年10月号)