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新潟市医師会報より

新潟市医師会

レビー小体型認知症の幻視体験

今野 公和

「あっ、あそこに一人の青年がうずくまっている、無表情で、微動だにしない。にこにこ笑って私に挨拶している男性は、たぶん私の知り合いだろう。しきりに私に話しかけ、来てくださって嬉しいです、という。ふと、右を振り向くと、大きな男が壁に向かっている。この人も全く動かない、と思ったら今度は左移動して壁に向かってじっとしている。この家の奥さんが、ケーキとお茶を持って来てくれた。あっ、その脇を蛇が見えた、よく見るとひもだった。子犬も走ってきた、あっ又消えた。」

これは、2019年8月30日江南区認知症分科会(会長今野)主催、パナソニック エイジフリーショップ共催で行われた、「VR(virtual reality)で幻視を体験する」に参加したときの、私の感想です。この分科会は、江南区在宅医療・福祉ネットワークの中の認知症分科会で、隔月に一回開きます。

日本認知症学会で配布された、『認知症疾患診療ガイドライン』(2017)では、レビー小体型認知症(DLB)の中核的特徴のひとつとして、幻視を、「繰り返し出現する構築された具体的な幻覚」と定義しています。

幻覚ですから幻聴も含まれます。

DLBは認知症ですから、物忘れが主症状なのに、なぜか、幻覚だけはしっかり覚えていて、本人が検者にはっきり答える人が多いのもおもしろい。

そこで、当こんの脳神経クリニックで、これまで、幻視がみられたレビー小体型認知症症例全例の幻視の内容を検討してみました(重複あり)。

1)ヒトが見える:50例(男16例、女34例、71才から92才、平均83.8才)

内容はさまざまで、知らないヒトがひとりまたは複数、子供を見る方も多く、数人の子供たちが逃げていったと追っかける症例もある、亡くなった兄弟や夫のこともあり、外孫を見る方も結構おられる、中には笑っていると表情のわかる方もいるが、たいていは表情がわからない。1例だけ、包丁を持ったヒトと答えた方がいる。中には、黒い服を着ているとか、帽子をかぶったヒトなど、具体的に描写ができる方もいる。VRでは、知り合いの家にお邪魔した設定で、明らかに変なヒトが見えたが、実際の幻視は、孫や子供や亡くなったヒトなど知っているヒトも多く、中には赤ちゃんと答えた方もあり、幻視に親しみこそあれ、恐怖を覚えていないヒトが多い。包丁を持っているヒトがいて怖いと答えた方はたった1例である。亡くなったヒトが見えるのは、立花隆の臨死体験に似ているが、花畑はない。臨死体験は、側頭葉への刺激症状であり、DLBは後頭葉の血流低下という、その違いだろうか?

2)虫:8例(男3例、女5例、64才から88才、平均82.9才)

単数の虫5例、多数の虫2例、蜂1例

しきりに、追い払ったり、潰したりする動作がみられるという。

3)動物:13例(男7例、女6例、65才から91才、平均82.3才)

猫6例、犬3例、蛇2例、鳥3例、ネズミ2例、熊1例(重複あり)

4)その他:11例(男7例、女4例、64才から91才、平均83.1才)

壁、みぞれ(あられ)、タンス、ビニール、ペットボトルなど…

以上、幻視の内容は非常に雑多であり、その方の環境や生活歴(教育歴、職業歴)が影響していると思われます。なおVRで、蛇に見えたひもがあったが、これは錯視で、「2階にだれかがいる」というのは、妄想です。

また、幻聴のケースは、誰かとしきりに会話していて、家族に気付かれる方が多い。お経や演歌が終始聞こえると訴える方もいます。

画像診断は、頭部MRIでは、後頭葉や海馬の萎縮は少なく、VSRAD※も1.5以下が多い(アルツハイマー型認知症を合併すると多くなります)。DAT scanや心筋シンチは、有効で、保険適応も認められていますが、核を用いるため、身体的侵襲があります。

現在、アリセプト(一般名ドネペジル)に保険適応が認められていますが、この主成分はコリンエステラーゼ阻害薬ですから、レミニール(一般名ガランタミン)や貼り薬リバスチグミンにも抗コリンエステラーゼは含まれておりますので、いずれ適応は広がるでしょう。もっとも、レビー小体型認知症(DLB)にはアルツハイマー型認知症もよく合併しますので、その際はこれらを処方できます。このDLBは薬物過敏もあり、またremission(自然寛解)もあるので、幻視の自然消滅もよくみられます。

それでは、まわりのひとはどう対応したら良いでしょうか?

大事なのは、介護者が、「そんなの見える訳ないじゃないか」などと真っ向から否定したり、怒ったりしないことです。本人には見えているのですから、否定されると、不安になったり、暴言となったりします。診察室で、そんな場面があると、私は即座についてきた介護者に、「幻視は病気の症状です」と、説明して納得してもらい、むしろ共感し、同情してもらっています。これが、真のパーソンセンタード ケア(person-centred care)ですね。

(令和元年12月号)

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