黒田 兼
京都の夏は強烈に暑い。本当に暑い。すれ違うビジネスマン達はゆでだこのように顔が真っ赤で、ハンカチで汗をふきふき歩いている。一昨年のお盆、朝から京都の街中を歩き回っていた。ペットボトルを握りしめ水分を取ってはいたが、油断すると気が遠くなりそうだ。夕方4時頃にヘトヘトになって、辿り着いたのが前田豊三郎商店。八百一本館という京都の高級スーパーの2階にある酒屋さんで、その一角に数人座れるカウンターがあり、お酒が飲める。「この炎天下、歩き回ったから喉が渇いて…」とお店のソムリエさんに相談すると、「じゃあ、まずスパークリングですね」と勧めてくれた。よく冷えたそれを一気に飲み干す。明るい時間のお酒は格別。急速に酔いが回るのを感じながら、さらに3種類のワインの飲み比べセットを注文した。
ここは自然派ワインと日本酒を主に扱うお店。お酒に興味はあるが知識の乏しい私にとってこのカウンター席は絶好の場所である。例えば飲み比べセットの場合、ソムリエの方がまずは自分の好みをきいてくれて、6種類くらいの中から3種類を選んでくれる。こちらが問えばワインならブドウ、日本酒なら酒米の品種、製法やそれぞれのお酒のキャラクターなど詳しく説明してくれる。また、どんな順番で飲めば違いがわかりやすいか、それぞれのお酒の間に水を飲むべきか否か?など細かな質問にも丁寧に答えてもらえた。六角堂というお寺のすぐそば、京都のど真ん中で昼間から楽しくお酒を飲める隠れ家的お店だ。
次は夕食時によくお邪魔するお店。ある日何を食べようかなとぶらぶらしていると、小さなお店が長屋のように並ぶ小路を発見。そのうちの一軒が京鴨料理とある。私にとって鴨料理といえば、脂のけむりで白くかすむ部屋の中、鴨焼きを頂くイメージだ。はたして京鴨料理とは?と鴨好きの私は期待してのれんをくぐった。
お店に入ると1階は5席のカウンターのみ。2階は10席ほどのテーブル席とのこと。笑顔の女将さんに迎えられ、迷わずカウンター席に腰を下ろした。メニューを見て最初に気になったのは鴨ササミのたたき。「食べたことはないけれど…」と話すと、「くせがなくておいしいですよ」とのこと。柔らかであっさりしているけれど鴨のうまみを感じることができ、一緒に注文した京都の地酒がすすむ。お次は鴨つくね。しっかりした味のプリプリの卵黄に絡めていただくと、おいしい!そして、締めに勧められたのは鴨南蛮そばだった。いつもおそば屋さんに行くと、ついつい鴨南蛮を注文してしまう私も感服した。すんだきれいなスープにそばと鴨肉とネギ。このスープは日本酒を大量に使いアルコールを飛ばして、丁寧に時間をかけて仕込んだ、ご自慢のものだそうで抜群だ。塩分摂取量を日々気にかけているが、飲み干してしまいたい誘惑にかられた。お蕎麦と鴨のお肉のおいしさをシンプルに堪能できる一品だ。気さくな女将さんとの会話も楽しく、いつ行っても時間がたつのを忘れる。
「こんな時に京都のお店?」という声が聞こえてきそうだが、自由に旅行ができる日を期待して御紹介した。
前田豊三郎商店
住所 | 京都市中京区東洞院三条下る三文字町220 京都八百一本館2F |
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電話番号 | 075-223-3567 |
営業時間 | 12:00~20:30 |
URL | http://maetoyo.com/index.html |
京・鴨料理 はじめ
住所 | 京都市中京区道祐町135 |
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電話番号 | 075-708-7600 |
営業時間 | 昼:予約のみ 夜:17:00~23:00(L.O. 22:00) |
定休日 | 月曜日 |
URL | https://kyokamo-hajime.com/ |