本田 徳弼
だらだらと取り留めもない会話をしていたそのとき、入り口のドアが開き一人の老婦人が入ってきた。見るからに高級そうな着物に草履、白髪混じりの丸髷に細く引いた眉、カウンターの隅に座ると一息ついて、「お酒は呑まないのでお茶をいただいて鯵に小肌それから雲丹をお願い」お茶を一口啜るとおしぼりに指先をぬらし、注文順に握られた鮨を受け板に置かれるやいなや口に運んで「あぁ、美味しい、しあわせ」お茶を一口二口飲んで「ご馳走様、お勘定を」映画の一場面を観ている様な情景でした。この間僅か15分足らず、お見事、格好いいわー!
この場面を観せてくれたのが、改めて紹介するまでもない新潟が全国に誇る老舗「港すし」のカウンターです。昭和8年創業、西堀の屋台から始まり昭和11年より古町9番町の現在地で営業してます。「すし一髄、変わらぬ心粋」を信条に、3代目川上伸一社長の下、ここで働いていることに誇りを持っているスタッフにより営われております。
新潟は港町の利を活かし四季を通して日本海の新鮮な魚介類が豊富に揃います。この新鮮さを売りにした刺身や寿司はもちろん、同じ食材にひと手間加えることにより生み出される味や見た目、香りなど、また豊かな食材へと変化します。食すれば自然と「あぁ、美味しい、しあわせ」と口から溢れてしまいます。
1階はカウンターのみ、2階にテーブル席と和室があり人数によってどのようにでも利用できます。私の場合、1人か2人なら断然カウンター席、3人から6人なら2階テーブル席、それ以上なら和室を使わせてもらってます。お寿司屋さんの形態も様々で、回転寿司もあれば予約制高級寿司も、それぞれたまに利用しますが、県外からのお客さまや大切な方との食事ならここ「港すし」がおすすめです。なんと言っても清潔でネタも新鮮、落ち着いた雰囲気、自分に合った時間と味を提供してもらえるお店です。多少のわがままにも応えてくださいます。そういえば、メニュー以外で最高の鮒寿司を出していただいたのも、歌舞伎界の今は亡き先代の勘三郎さんにお目にかかったのもこちらでした。
6年前からは本町の人情横丁で市場店も開いており、お昼時に短時間でお手軽にいただくならこちらもおすすめです。目の前で板前さんの包丁捌きや絶妙な握り具合を堪能できます。
どちらのお店も新潟で寿司を食する幸せを感じさせてもらえます。
港すし
古町本店
住所 | 〒951-8063 新潟市中央区古町通九番町1454番地 |
---|---|
TEL | 025−222−3710 |
市場店
住所 | 〒951-8066 新潟市中央区東堀前通5(人情横丁) (電話はありませんのでお問い合わせは古町本店まで) |
---|